デビュー40周年佐野元春 1980年代前半の楽曲を振り返る



田家:1984年5月発売、4枚目のアルバム『VISITORS』からのシングル・カット「コンプリケイション・シェイクダウン」でした。佐野さんの40年間の軌跡には、潔い決断とか冒険的で果敢な挑戦など色々な場面があると思っているのですが、最たるもの、そして最初のものが1983年から1984年にかけてのニューヨーク行き。海外レコーディングは1970年代終わりから1980年代にかけて広まってきたのですが、生活体験として向こうに行って、そこでアルバムを作り上げたというケースはなかったと思いますね。

佐野:そうかもしれない。でも自分にとっては国内でレコーディングすることと国外でレコーディングすることに特に違いはなかったんですよね。ただ、自分が求めているビジョンがどこにあるのか? それが大事だった。

田家:ニューヨークに行った時には、レコーディングしようというところまでビジョンがあったんですか?

佐野:ありました。

田家:どんなものになるかというところまでは見えていなかった?

佐野:具体的には見えていなかった。

田家:当時のニューヨークではHIPHOPムーブメントというのが始まっているわけで、ストリートカルチャーが燃え盛り始めていました。そこに入っていくにあたって、自分を変えないといけないなと思ったことってあったんですか?

佐野:自分の出番だなと思った。HIPHOPやラップの様式というのは、メロディよりも言語傾向の強いポップ表現ですから。それ得意だよっていう思いはあった。で、日本語でラップやったら友達が面白がってくれた。「日本語のラップは世界で初めてだよ」って言われて、そうだなって思った。束の間の自由をビートに任せて、転がり続けなっていう感じだ。

田家:アルバムの中の「WILD ON THE STREET」、シングルのカップリングにもなりましたけど、その中に俺を壊してくれっていうフレーズがあったりして、自分を解体しなければならない場面もあったのかなと思ったりもしていたのですが。

佐野:若い時は細胞分裂が激しいからね。自分を乗り越えて新しい未来へ、という感じだったじゃないかなと思います。

田家:そういうドキュメンタリーのようなアルバムっていう風に思って差し支えないですか?

佐野:そうだね、『VISITORS』はニューヨーク生活の中から生まれたドキュメンタリーと言える。

田家:そのアルバムの中からこの曲をお聴きください。4枚目のアルバム『VISITORS』から、「ニュー・エイジ」。

Rolling Stone Japan 編集部

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