パリス・ヒルトンの正体 インフルエンサーの元祖がはじめて明かした虐待経験

2019年12月13日、米ビバリーヒルズのビバリー・ヒルトンで行われたストリーミー・アワードで、カメラの前でポーズをとるパリス・ヒルトン(Photo by Chris Pizzello/Invision/AP)

パリス・ヒルトンにはふたつの顔がある。Y世代のパリス・ヒルトンとZ世代のパリス・ヒルトンだ。

Y世代(80年代序盤から90年代中盤までに生まれた世代)にとって、ヒルトン一族といえば「生まれながらの有名人」で、パパラッチのカメラの前でポーズをとったりベロベロに酔いつぶれてNYのクラブ「Bungalow 8」から出てくる以外に能がない、つぶらな瞳のおてんばご令嬢という定着したイメージがある。

だがZ世代(90年代中盤以降に生まれた世代)にとって、パリス・ヒルトンは時代の象徴だ。自力で財を成したビジネスウーマンの先駆けであり(フレグランスをはじめとする彼女のブランド商品の時価総額は数十億ドル)、InstagramやTikTok動画でひっきりなしにもてはやされる2000年代初期の美的感覚――セクシーなドレスやラインストーンを埋め込んだチョーカー、フィンガーレスグローブなど――を生んだファッション・アイコンであり、音楽界で活躍する(おそらくは過少評価されている)アーティストでもある。そして何より、カイリー・ジェンナーやヘイリー・ボールドウィンのはるか以前にさかのぼる元祖インフルエンサーで、幅広いコネと親の七光りで巨大な地位を築いているその他ハリウッドの若い女性の先駆者だ。

アレクサンドラ・ディーン監督によるYouTubeオリジナルのドキュメンタリー映画『This Is Paris』が描こうとしているのは、Z世代のパリス・ヒルトンだ。リアリティ番組『シンプル・ライフ』での迷言や、コーチェラ・フェスで報じられたパンツ丸見えスタイルを世間が笑いものにする中、ひそかに数十億ドルの帝国を築き上げた叩き上げの女性、駆け出しの起業家、#girlbossとして。また虐待経験者として、女性活動家としての新たな立ち位置を提示することで、今までとは違うヒルトンのイメージを打ち出そうとしている。

Translated by Akiko Kato

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