ケンドリック・ラマー『To Pimp a Butterfly』が2010年代の最重要作となった理由

ケンドリック・ラマー(Photo by Josh Brasted/WireImage/Getty Images)


南アフリカへの旅、「殺人打線」級のコラボレーター

『To Pimp a Butterfly』のインスピレーションとなった当初の衝動は、ケンドリックが南アフリカを訪問したときにやってきた。この旅の中でケンドリックはロベン島に訪れた。ネルソン・マンデラが18年間にわたって収監されていた地だ。「私はアフリカの一員だ、と感じた」ケンドリックはそう語っている。「全部教わった覚えのないことばかりだった。おそらく、もっとも実行するのが難しいことのひとつは、ある場所がいかに美しくなりうるかという概念をまとめあげ、そしてそれを伝えることだ。コンプトンのゲットーにまだ暮らしてるような人たちにね。そういう経験を音楽を通じてつくりたかった」。ケンドリックは2ndアルバムに向けて既にいくらか録音していたが、破棄した。

彼の新たなヴィジョンを実現するためには、「殺人打線」級のコラボレーターが必要だった。そのため、ケンドリックのおなじみのメンツ――プロデューサー/楽器奏者のテラス・マーティン、サウンウェイヴなどを含む――だけではなく、優れた才能をソウル(ロン・アイズレー、レイラ・ハサウェイ)、ファンク(ジョージ・クリントン)、そしてヒップホップ(ドクター・ドレー、ファレル・ウィリアムス、ピート・ロック、スヌープ・ドッグ)を集めた。さらに、ケンドリックはジャンルをやすやすと越境する音楽に造詣の深い人々にも頼った。サックスを担当したカマシ・ワシントン、キーボードのロバート・グラスパー、ベースのサンダーキャット、そしてバッキング・ヴォーカルのビラルらだ。



ケンドリックは曲を一度にひらめき、かたどり、合成した。「彼はあっという間にものすごくドープな曲を書けるんだ」とカマシは説明した。「一方で、時間を書けて慎重に取り掛かって、完璧を目指すんだよ」

「King Kunta」は当初、サウンウェイヴによると、「素敵なフルートがのった、これまでで一番ジャジーな奴」として始まった。しかしケンドリックがサウンウェイヴに「汚くしてくれ」と頼んだことで事情が変わる。ケンドリックがサンダーキャットを知ったのは、ロサンゼルスのアンダーグラウンドなヒップホップ・アクト、Sa-Raの未発表曲で演奏しているのを聴いてだった。ケンドリックはその曲をいたく気に入って、Sa-Raのタズ・アーノルドを呼び寄せた。彼はその後、『To Pimp a Butterfly』のうち3曲のプロデュースを助けることになる。



時間はどうだってよかった――ケンドリックはファレルが「Alright」に提供したビートと半年に渡って向き合って、警察による暴力に講義する男たちと女達のあいだに広まったあるマントラへと変身させた。おかげでこのマントラは2015年のアンセムになった。ケンドリックはまた、「The Blacker the Berry」のビートを大事に育て上げた。マイク・ブラウンが殺害されたことを受けて、ケンドリックはリリックのなかでこの事件について言及したのだった。

『To Pimp a Butterfly』がリリースされると、「それはあらゆるものを超越してしまった……和声的にも、楽器の編成においても、構造的にも、詩的にも」カマシはそう語る。「まるで、人々が抱いていた期待そのものを変えてしまったようにさえ思う。音楽を変えただけじゃない。オーディエンスも変えたんだ」

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From Rolling Stone US.

Translated by imdkm

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