ポルノではなく芸術、世界の官能映画30選

20.『ドリーマーズ』(2003)

Photo : Fox Searchlight/courtesy Everett Collection


『ラストタンゴ・イン・パリ』で実存主義に挑んだ数年後、ベルナルド・ベルトルッチ監督はフランスのヌーヴェルヴァーグと1968年の5月革命時代を振り返り、驚くほどの寛大さとともに当時を描いた、セックス浸りの映画『ドリーマーズ』を制作した。同作では、アメリカ人留学生を演じたマイケル・ピットがエヴァ・グリーンとルイ・ギャレル扮するセクシー(そしてどことなく近親相姦的)な双子とパリのアパルトマンで同棲生活を始め、ありとあらゆる独創的なセックスにふける。ベルトルッチ監督作品にふさわしく、映画における——解放的であると同時に恐ろしくもある——セックスの可能性は無限のように見えるが、外の世界の混乱によって全員が現実に引き戻される。同作は『ラストタンゴ・イン・パリ』のような興行成績は達成できなかったものの、FOXサーチライト・ピクチャーズ(現サーチライト・ピクチャーズ)という製作・配給スタジオが財政面でのダメージを与え得るNC-17指定映画にゴーサインを出した珍しい例として注目に値する。(Writer: BILGE EBIRI)

21.『KEN PARK』(2002)

Photo : Courtesy Everett Collection


ラリー・クラーク監督作のなかでももっとも物議を醸した『KEN PARK』が米国で正式に上映されなかったのは、ティーンエイジャー同士の(フェラチオを含む)非擬似セックス、3P、ボンデージ、近親相姦、さらにはショッキングな暴力を描き、あまりに挑発的だったから? それとも、単に楽曲の原盤権の権利処理の問題だろうか? 答えは永遠に闇のなかだが、ハーモニー・コリンが脚本を手がけた、中・低所得者が暮らす郊外を描いたダークな同作は、さまざまなスケーター・パンクのティーンエイジャーと、保護者たちとの複雑な(正確には「めちゃくちゃな」)人間関係を映し出している。クラーク監督とコリンの基準からしてもひねくれた作品である。ガールフレンドの母親と寝る男が同作でもっともまともなキャラクターである時点で、『KEN PARK』が普通ではないことを教えてくれる。(Writer: BILGE EBIRI)

22.『ブラウン・バニー』(2003)

Photo : Mary Evans/KINETIQUE INC/VINCENT GALLO PRODUCTIONS/WILD BUNCH/Ronald Grant/Everett Collection


映画監督を志す人たちは、次のことを忘れないでほしい。映画の上映時間のほとんどを費やして主人公に事実上何もさせなくても構わないし、エンターテイメント業界の誰よりも自己陶酔的であっても結構だ——主演女優のフェラチオで映画を締めくくる限りは。これこそ、監督と脚本を手がけたヴィンセント・ギャロが自ら主演したペットプロジェクト『ブラウン・バニー』の重要点である。主人公のバイクレーサーは、じっと考え込む以外は劇中で何もしない。それでも同作が話題になるのは(ギャロと映画評論家のロジャー・イーバートとのあいだに強烈な確執が生まれたことを除き)、共演者のクロエ・セヴィニーの口のなかにギャロが“ギャラ”を突っ込んだからだ。撮影の際におそらくギャロが人工装具の男性器を使っていたからといって、このシーンを観るときの気まずさは和らがないし、このメジャー作品においてこのシーンが(何らかの)意図があることに変わりはない。観客は、世界的に有名な才能あふれる女優が自らの品位を落とす姿をワンカットで目撃する。いっそ本物のポルノ映画を観るほうが嫌な気分にならずに済む。(Writer: DAVID FEAR)

23.『ナイン・ソングス』(2004)

Photo : Mary Evans/REVOLUTION FILMS/Ronald Grant/Everett Collection

『マイティ・ハート/愛と絆』(2007)のイギリスのマイケル・ウィンターボトム監督は、粗削りのロマンチックなストーリー、コンテンポラリー・インディーロック、きわどいセックス描写を通じて1970年代のアート系エロティカ作品を2000年代にふさわしいものにアップデートした。フランツ・フェルディナンド、エルボー、ザ・ダンディ・ウォーホルズ、プライマル・スクリームといったアーティストによるライブ演奏をフィーチャーした『ナイン・ソングス』は優れた作品で、時には人間関係が性的な出会いによってどのように展開するかについて新しい見方を教えてくれる。いままでの作品と異なり、『ナイン・ソングス』は女性の快楽に徹底して追求しており、その印象はセックスの最中とその後の女優マルゴ・スティリーの恍惚とした顔にもっとも長く、パワフルに刻まれている。ERIC HYNES

24.『ショートバス』(2006)

Photo : Think Film/courtesy Everett Collection


セックスシーンなしにセックスに肯定的な映画を創ることはできないし、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)の次にジョン・キャメロン・ミッチェル監督が手がけた『ショートバス』ほどセックスに肯定的な映画は存在しない。ニューヨークはブルックリンのサロン“ショートバス”に集う人々の恋愛生活を描いた同作では、異性同士・同性同士・カップル・3人組・本命を見つけた独身者のありとあらゆるセックスがあけすけに繰り広げられる。この手の多くの作品と異なり、ミッチェル監督のエロチックな群像コメディは、登場人物たちの悪ふざけをただのショッキングなネタとして取り扱っていない。同作では、セックスにも吸うことにも同等の価値がある。たしかに、男同士が身体中に射精したり、延々とクンニリングスが続いたりするシーンに慣れていない観客は気まずさを感じるかもしれないが、ミッチェル監督が描くグループセラピーの雰囲気は、実際に他人のセックスを見ていることを実感させてくれる。ミッチェル監督は、ほぼポルノ映画と言ってもいいような、観る人を前向きな気分にさせてくれるテンプレートを生み出した。(Writer: DAVID FEAR)

Translated by Shoko Natori

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