ポルノではなく芸術、世界の官能映画30選

25.『ラスト、コーション』(2007)

Photo : Focus Features/Courtesy Everett Collection


大日本帝国による祖国・中国の占領を阻もうと、過激派の学生グループはミスター・イー(トニー・レオン)という日本軍の傀儡政府の高官を罠にはめ、殺害するために若く美しいワン・チアチー(タン・ウェイ)をスパイとして雇う。すべては計画どおりに進むものの、イーとワンは計画を台無しにしかねないほどの情熱的な恋に落ちる。『ブロークバック・マウンテン』(2005)のアン・リー監督は、ふたりの情事の詳細を厳格なまでに描き、彼らの肉体的衝動は恐ろしさを感じさせるほどだ。こうしたシーンには珍しい長さと、頬を紅潮させた俳優たちの心地良さそうなセックスの描写により、同作はNC-17に指定された。(Writer: ERIC HYNES)

26.『エンター・ザ・ボイド』(2009)

Photo : UNIMEDIA EUROPEWILD BUNCH


フランスの鬼才ギャスパー・ノエ監督のVR叙事詩『エンター・ザ・ボイド』は、幻覚状態による死後の世界の冒険を描いている。ドラッグ中毒の死んだ兄の魂は肉体を離れてネオンが輝く東京の街を浮遊するが、ずっと一緒にいるという約束を果たすため、東京でストリッパーとして裸体をさらしながら働く妹(パス・デ・ラ・ウエルタ)を見守りに現世に戻ってくる。ノエ監督作品にふさわしく、兄の魂は女性器に挿入された男性器のクローズアップと子宮頸部までの旅(女性器の内側から撮影)という形で生への復活を遂げる(Writer: BILGE EBIRI)

27.『SHAME−シェイム−』(2011)

Photo : Copyright Fox Searchlight Pictures. All rights reserved./Courtesy Everett Collection


『それでも夜は明ける』(2013)を制作する前、スティーヴ・マックィーン監督はウォール街で働くセックス依存症の男(マイケル・ファスベンダー)が主人公のダークなドラマ映画『SHAME−シェイム−』を手がけ、究極の悦楽を探し求める男の毎日を描いた。マイケル・ファスベンダーというルックスのせいで、不幸にも男は意味のないセックスを手軽に経験でき、劇中はそんなシーンであふれている。一夜限りの関係、売春宿通い、ポルノを観ながらマスターベーションにふけるランチタイムなど、この哀れな男は心の傷を癒すために誰かと絆を結ぼうとしては、失敗する。独自のスタイルを通じてマックィーン監督はこの世界の特殊さや質感から目を逸らさず、次から次へとセックスと裸体(“Fassmember”と話題になったファスベンダーの臀部も)をさらけ出す。楽しいという感情とは無縁の作品である。(Writer: BILGE EBIRI)

28.『WEEKEND ウィークエンド』(2011)

Photo : Courtesy of IFC Films


アンドリュー・ヘイ監督が米HBOの人気コメディドラマ『Looking(原題)』を制作する前、ヘイ監督は長い週末に親密な関係になるふたりの男が主人公の『WEEKEND ウィークエンド』を手がけた。一夜限りの関係だと思っていたものがやがてはよりパーソナルなものへと変化するなか、ふたりは真剣な交際を望んでいないと率直に告白する一方、一連の打ち明け話を通じて疑いようのない親近感を抱く。それとともにセックスシーンはますますきわどくなり、男が身体中に射精するシーンは、観客に想像の余地を一切与えてくれない。こうしたシーンは濃密でありながらも婉曲的であり、観客はふたりの男の強くなる絆と欲望の表現を目の当たりにする。(Writer: ERIC HYNES)

29.『アデル、ブルーは熱い色』(2013)

Photo : Sundance Selects/Courtesy Everett Collection


2013年に第66回カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた『アデル、ブルーは熱い色』は、アデルという若いフランス人女性(アデル・エグザルコプロス)が自分より経験豊富なレズビアンの女性(レア・セドゥー)との出会いを通じて成長する姿を描く。同作が果敢に挑んだ露骨なセックスシーンとレズビアンという関係に対する概して肯定的な描写は、賛否両論を引き起こした。果たして『アデル、ブルーは熱い色』は、ふたりの若い女性のあいだで育まれる愛と、やがて訪れる破局を誠実に描いた作品なのか? それとも、男性監督とふたりの異性愛者の女優が起用され、刺激的なセックスシーンが描かれている時点で妥協を強いられているのだろうか(その両方という可能性はあり得るだろうか?)? いずれにせよ、愛し合うふたりが交わす優しい眼差しは、ふたりの主演女優がさまざまな体位で延々と悦楽に興じるとくに長いシーンによって永遠に評価の対象となるだろう。(Writer: BILGE EBIRI)

30.『湖の見知らぬ男』(2013)

Photo : Strand Releasing/Courtesy Everett Collection


おもに南フランスの湖畔が舞台のアラン・ギロディ監督のスローなスリラー映画『湖の見知らぬ男』では、フランクという青年(ピエール・ドゥラドンシャン)が口ひげをたくわえた魅力的な男(クリストフ・パウ)に惹かれていく様子が描かれる。フランクは、この男が殺人犯なのでは? と疑う。同作の過激でありながらも爽快な点は、男のヌードと男同士のセックスをいかに普通なもの、ましてやありきたりなものとして描いていることだ。だからといって、茂みのなかの隠れたセックスがスリリングじゃないとか、同作が人気のいない場所でのセックスシーンを出し惜しみしているとかではない。エキゾチックな未開の自然というよりは、その場の風景の一部としてこうしたシーンを見せつけられるほうが、なぜかずっとドキドキするのだ。(Writer: ERIC HYNES)

From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori

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