SKY-HIとSTAMPが語る、日本とタイの音楽カルチャーシーン


ーもうひとつ触れておきたいのは、コロナ禍の各国の政府の対応にも、大きな違いがあったということです。


SKY-HI:そうですね。

ーたとえばドイツでは芸術家に対して迅速な対応が取られましたが、それだけ音楽や映画の価値というものをしっかり認識してもらっているということに他ならないと思います。そして、現在イギリスで違法レイブが頻発しているようで、それは奨励できることではないにしろ、やっぱり文化の根付き方が全然違うなと思いました。

SKY-HI:「違法レイブ」ってワードだけでワクワクしますね。

ー(笑)。ここ数ヵ月のリアクションを見ていると、日本人の中に音楽が本当の意味で根付いていないんじゃないかという印象を僕は持ちましたが、SKY-HIさんはコロナ禍以降の動きに何を感じ、今後どういう活動をしていきたいと思っていますか。

SKY-HI:3段階あると思うんですけど、まず1個目は満足な補償がされていたか、こっちを向いてもらっていたかに関しては、そうではなかったと思います。なので声を上げることは本当に大事だと思います。これって芸術家という存在がいなかったら、どんな人間に育っていただろうっていう話なんだよね。食べるものと寝る場所があれば生き物としては育つだろうけど、本がなかったり、絵がなかったり、映画や音楽がなかったら、すごく貧しいことじゃないですか。僕はアーティストであると同時に、アートに魂を救われている存在だから、守りたいんですよね。

ーふたつめは?

SKY-HI:まさにおっしゃっていた通り、僕としても結構な衝撃だったんだけど、世論を含めて「いやいや、音楽でしょ?」みたいな雰囲気が本当に少なくなかった。これは友人のアーティストとも絶望に打ちひしがれながら話したんですけど、薄々感じてはいたけど、こんなに芸術に愛情のない国だったんだっていうことに凄く食らってしまって。生き死にに直接関わらない以上、まぁそんな物だよなと覚悟はしてたし謙虚さは必要だとも思ったのですが、それでも直面する事態に突きつけられる絶望はありました。僕は直接酷いことを言われたりはしなかったんだけど、そういう意見もぶっちゃけ散見しましたし、現状芸術に愛情のない国である事は受け止めなくてはならないと感じました。でも、それって日本において絵や音楽や映画が、コマーシャルなものであることを前提とした存在だったことが問題だったのかなと思いました。そうしてしまった責任の一端はもちろん自分にもあると思います。

ーなるほど。

SKY-HI:たとえば音楽では昔から恋愛の歌が多いって言われていて、それって絶対悪いことじゃないんだけど、どうしても本質的なことよりも即物的なものだったり、俗物的なもの。そういうコマーシャルなものがずっと日本の芸能の中心にあって。しかもものすごくデカい存在としてあったというのが問題なんだと思いました。そこで3つめですが、アーティストとファンとの関係性を見つめ直さないといけないと思います。ちゃんと自分の音楽を愛して、その音楽を愛してくれる人を愛するっていう関係値をゼロから作るつもりで構築していくことを、たぶん何年もかけてやらないといけない。それをやっていかないといつか手遅れになってしまうなと感じました。自分と自分のファンの間ではそれに近い関係が作れているのではとも感じていますし。

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