オアシス「ワンダーウォール」25周年 「ロックの時代」最後のスタンダード曲を振り返る

1995年、TV番組『The White Room』で演奏するオアシスのリアム(左)とノエル(Photo by Des Willie/Redferns/Getty Images)

オアシスの代表作となった2ndアルバム『モーニング・グローリー』が、2020年10月2日でリリース25周年を迎える。この記事では、同作に収録された「ワンダーウォール」をフィーチャー。ギャラガー兄弟を含む関係者の証言を交えながら、このバラードが不朽のスタンダードになるまでを振り返った。


●【写真を見る】1995年のオアシスと『モーニング・グローリー』


嫌味であれ何であれ、リアム・ギャラガーが言葉に詰まることはめったにない。だが最近ローリングストーン誌とのインタビューで、1995年のオアシス時代の大ヒットバラード「ワンダーウォール」がSpotifyで10億回ストリーミングされたと聞かされると、彼はほんの一瞬言葉を失った。

「それはすげえな」 10億の重みをかみしめるかのように、ようやく口を開くとリアムはこう言った。だがその後、作曲家の兄ノエルいびりが好きな昔のリアムが戻ってきた。「きっと犯人は――たぶんノエルだ。あいつが1時間半PCの前に座って、ずっとクリックしまくったのさ。だからあいつはいつも世間を目の敵にしてるんだ」



冗談(とおなじみギャラガー兄弟劇場)はさておき、「ワンダーウォール」は不朽の名作となった――時代を超え、新たなスタンダードになった90年代のヒット曲。オアシスの2ndアルバム『モーニング・グローリー』に収録された「ワンダーウォール」は、リリースから来月で25年になる。ローリングストーン誌のチャートを運営するAlpha Dataによると、ほぼ毎週およそ50万回(音声と動画を合わせると75万回)ストリーミングされている。ローリングストーン誌に連載をもつティム・インガム氏が昨年推定したところでは、Spotifyでの「ワンダーウォール」の楽曲使用料は24時間ごとに2560ドル、1年にすると100万ドルに上るとみられる。さらにこの曲は、ここ数年SpotifyのTop 200チャートにもランクインしている。インガム氏も指摘しているように、ポップやヒップホップ、ラテンの新曲が幅を利かせる同チャートに20世紀の楽曲がランクインするのは珍しい。

「ワンダーウォール」はリリース当時から突出していた。オアシスの代名詞でもある突然降ってわいた新ブリティッシュ・インヴェイジョンのファンファーレにそぐわなかったというのもあるが、それだけではない。悩みを抱える人への愛と救いがはっきり表れたこの曲は、それまでのオアシスの曲に見られた高慢さはなく、素直で、誠実だった。メロディと路上ライブのようなシンプルなアレンジは、オアシスとリアムを繊細な存在に感じさせた。あの曲には始めから時代を超えるような雰囲気があった――100回近くカバーされていることがそれを証明している。

ワン・ダイレクションはビーチでこの曲をハモり、ライアン・アダムスとキャット・パワーはいずれも素朴で情感たっぷりなカバーに仕上げた。ポール・アンカはビッグバンド風のラウンジ作品に生まれ変わらせ、リアン・ライムスはポップカントリー風バラードに、ピアニストのブラッド・メルドーはジャズにアレンジした。「『ワンダーウォール』にはいつも心を揺さぶられるの」とライムスは言う。「90年代の私は10代特有の怒りを炸裂させていた。あの曲はその時の気持ちと完璧に合っていた」

●【動画を見る】多くのアーティストにカバーされてきた「ワンダーウォール」

Translated by Akiko Kato

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