プリンス『パープル・レイン』の衝撃「音楽について知っておくべきDNAを全て含んでいる」

原体験にプリンスがあれば、ルールなんて馬鹿らしく思えるようになる

最初の大きな音楽的な原体験のひとつがプリンスだった場合、ルールなんて考え方は馬鹿らしく思えるようになる。「もし自分がわいせつで、違う響きのものを取ってきてひとつに組み合わせるなんてことをしたらどうだろう」なんて考えない。プリンスが最初のヒーローなら、そんなこと気にすることじゃないんだよ。

「The Beautiful Ones」のクレッシェンド――“彼がほしいのか、僕がほしいのか? だって僕はあなたがほしい”――は、子供心に背筋がひやっとしたのを覚えている。彼の言っていることが感じ取れたし、彼のやっていることが持つ力が理解できた――彼がどうやってその一節にたどり着いたかを理解せずとも。だって僕自身はそういう瞬間に導いてくれるような自分なりの経験なんて持ち合わせていなかったんだから。それでも、とても力強かった。僕はまさしく、「なんてことだ、信じられないほど素晴らしい音楽ってだけじゃなくて、これは僕が考える男のあり方のプロトタイプみたいなものじゃないか」って感じだった。



彼が言っていることには、なにやら経緯とか情熱が宿っていることが僕にはわかった。それがいかに力強いか感じ取ることもできたけれど、理由は把握していなかったし、筋書きもわかっていなかった――いまでも、ご覧の通り、うら若い少年のように、僕はいわば心をかき乱されている(笑)。当時はまるで「うわあ、感情の世界が開かれてる、もうちょっとでわかりそうだ」って感じだった――でも、そんなのわかるわけないんだ、まだ実際に経験したことが一度もないのにさ。

以上が、彼が僕にしてくれたこと。幼い子供だった僕は、彼の手でそれまで認識したことがなかったような感情の領域に投げ込まれて、しかもそれは音楽をきっかけとするものだった。それまで、すべてはとてもまっすぐに感じられたものだ。たくさんの音楽を愛していたけれど、ミステリアスに感じられるものはなかった。プリンスは謎めいていた。いまもまだそうだよ。

※聞き手:Jon Blistein


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From Rolling Stone US.

Translated by imdkm

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