プリンス『サイン・オブ・ザ・タイムズ』 関係者が明かすリイシューと音源発掘の内幕

ライブ音源とマイルス・デイヴィスとの共演について

―ボックスに入っているライブ曲はどのように選びましたか? また、映画での楽曲が入っていない理由は?

ハウ:このボックスセットにはいくつもの可能性があった。ただし、劇場公開された映画『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』で使用する予定だった楽曲に関しては収録不可だった。権利問題がさまざまに絡み合っていて、そのもつれを解くのは至難の技だった。映画で使用された楽曲も収録するように幾つもの方法にトライしたのだが、私たちが考えたベストな方法では解決しなくて、私たちはプリンスがそれを望んでいないと考えることにした。

そこで、ライブ曲の可能性を探ることにしたら、(1987年6月20日にオランダで行われた)ユトレヒト公演がいきなり浮上した。このライブはファンのコミュニティで特に愛されているもので、完成したステレオミックスが流通していたことを私は全く知らなかったんだ。観客が録音した低水準の音源がしばらく出回っていたことは知っていたけどね。とにかく、あのライブは扇情的で、あの頃の彼のライブでの芸術性にスポットライトを当てるものだった。また、DVD『Live at Paisley Park, New Year’s Eve 1987』を選んだのは、ライブ自体が驚異的だったことと、マイルス・デイヴィスが出演していたことが理由だ。

―マイルスとのスタジオ・コラボ曲「Can I Play With You」も入っていて、これがとても楽しいです。彼ら二人のスタジオ・コラボでの楽曲は他にどれくらいありますか?

ハウ:この曲のように完成していない楽曲がたくさんある。二人がお遊び的にプレイしているものもあるけど、遊びの域を超えていないので、それが残念でもあるね。その一方で、ミステリアスな空気感や未来に何かが起きるかも……的な雰囲気は、明確な現実よりも人を焦らすと思う。



―リリースの大前提として、未完の作品は出さないということですよね?

ハウ:その通り。外されたものは、どのような形でも今後プリンスが戻ってきて完成することが決してないもので、プリンスの芸術性を尊重する意味で、リリース曲の決定段階でそのまま残すことにした。

Translated by Miki Nakayama

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