プリンス『サイン・オブ・ザ・タイムズ』 関係者が明かすリイシューと音源発掘の内幕

『サイン・オブ・ザ・タイムズ』は2枚組で正解だったのか?

―すべてを聞いたということなのでお聞きします。当時のワーナーブラザーズが3枚組アルバム『Crystal Ball』をサイズダウンして、『サイン・オブ・ザ・タイムズ』にさせたことは正しかったと思いますか?

ハウ:そうだな、うーん、これは良い質問だ。当時、その話し合いの場に私はいなかったが、(元ワーナー社長の)ラリー・ワロンカーとは何年も一緒に仕事をしたし、プリンスもラリーと懇意にしていた。プリンスに「このアルバムは大好きだが、3枚組じゃなくて2枚組にしてほしい」と言ったのがラリーで、このときのプリンスはそれを快く思わなかったのも理解できる。それでも、プリンスは編集した。今思い返すと、あの決定は正しかったのだろうと思う。3枚組の作品は消化するのが大変だし、同じバンド、同じ状況という設定では特にそうだ。だから、あれは正しいことだったと思う。それに編集したことで、彼が本当にやりたかったことが芸術性を損なうことなしに正確に表れたと思う。でも、ほら、これに関してプリンスは絶対に異論を唱えるはずだ!

―今のあなたは80年代のプリンスが一気に作り上げた音楽の素晴らしさをはっきりと実感していると思います。その状況をどんなふうに捉えていますか?

ハウ:異世界のことのようだね。これまで多数の有名アーティスト、アイコン的なビッグネームたちと仕事をする機会に恵まれたが、その中でもプリンスはクリエイティヴィティの面でどんなアーティストとも次元が違う。彼のガイドヴォーカルは、他のアーティストが何テイクも録ったあとのマスター音源なんかよりも良い出来だ。彼は内側からとめどなく溢れ出る創造のエネルギーに満たされていたし、ジャンルの垣根など難なく飛び越えて、音楽性が変わってもファンが逃げることもなかった。R&Bの静かな嵐から、みだらでメカノイドなファンクまで、フルスロットルのアリーナロックからマハヴィシュヌ・オーケストラ的フュージョンまで、彼は変化し続けた。

つまり、あの男は、マジで、とんでもねぇヤツだった……ごめんね、下品な言い方してしまって。今の私は毎日そんな男の凄さに、誰よりも先に気づく幸運に恵まれている。音楽を愛する私にとって、こんなふうに素晴らしい音楽に没頭できるのは最高だ。19の頃の自分がこんな未来を予感していたら、驚きでアタマが爆発していたはずだよ。

―まだ名もない今後のプロジェクトにも参加する予定ですよね?

ハウ:ああ、その通りだ。現在、2つほど新たなプロジェクトを構想中で、まだ内容を話すことはできないが、この先も何かがあることだけは確かだね。


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From Rolling Stone US.

Translated by Miki Nakayama

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