収益構造の抜本的変化に伴うライブ産業の発展
フィジカルがmp3データに取って代わり、やがてストリーミングサービスの浸透に伴って、作品にまつわる収益構造も抜本的に変わりました。端的に言うと以前ほど儲からなくなった。それがゆえに音楽業界全体がライブ興行の収益により力を入れるようになった。象徴的なのはライブ・ネーションやAEGのような世界規模での興行をサポートする総合エンターテイメント会社と、今なら誰もが世界最大のフェスティバ
ルとして認知しているコーチェラですよね。
Coachella: 20 Years in the Desert
ただ、そもそも大規模音楽フェスティバルというのは60年代ヒッピーカルチャーの落とし子と言うべきウッドストック・フェスティバル発祥の文化。グレイトフル・デッド周辺のような一部の例外はあるものの、その後の30年の間、それを文化や産業として発展させたのはヨーロッパだった。
反核運動団体CNDや自然保護団体グリーンピースと歩調を合わせてきたグラストンベリーがその代表格ですよね。日本のフジ・ロックはまさにその系譜にあるわけです。それを、より商業的な形で発展させたレディングやリーズを筆頭に、英国はずっとフェス文化の中心地であり続けてきて、英国以外にも北欧のロスキレやスペインのプリマヴェーラやソナーと、ヨーロッパ各国に広がっていきました。
そして、コーチェラが始まったのが1999年。その後、2000年代後半からのEDMの隆盛を経ることで、巨大フェスティヴァルの中心地が一気に北米に移行していく。2018年のビーチェラはその象徴ですよね。その場にいる数万人だけでなく、全世界に向けたライブストリーミングによって4300万人もの人々が同時にその歴史的瞬間を目撃することになった。つまり、この20年でオンラインとオフラインそれぞれを組み合わせたビジネス・スキームがすっかり定着することになったんです。
Homecoming: A Film By Beyoncé