田中宗一郎が語る、オンラインカルチャーが駆動したポップ音楽の20年史と、パンデミック以降の音楽文化の可能性

既存の産業の外側へと食み出す英国文化の可能性

トラヴィス・スコットとザ・ウィークエンドのように、ずば抜けた才覚でオンラインカルチャーを使いこなすアーティストもいる。ただ間違いなく、オンラインカルチャーが音楽文化の刷新を刺激するカンフル剤として機能する時代は終わったと言っていいと思います。だからこそ、今、誰もが注目しているオンラインカルチャーとは違うところ――音楽業界から期待されている産業の外側に目を向けてみることこそが必要かもしれない。

実際、僕が注目しているのは英国です。UKクラブ・シーンでは2010年代初頭辺りから、大バコのクラブが苦境に立たされている一方、ソーシャルメディア上で参加を呼び掛けるイリーガルなコールパーティが盛り上がってきた。UKドリルなどのUKラップは、無課金で使えるYouTubeがプラットフォームのひとつになっていたりする。まあ、そこにも天下のカルチャーヴァルチャー、ドレイクの魔の手が伸びて来たり、暴力的なUKドリルの動画を行政が削除したるするようなことが起こったりもしてるんですけど。でも、どれも面白いじゃないですか?

Headie One x Drake - Only You Freestyle



そもそも英国には80年代後半のレイヴやウェアハウスシーン、あるいは、リバティーンズに代表される2000年代前半のイースト・ロンドン・シーンのように、産業の外側を舞台にしてオーディエンスとの新たな繋がりを模索しようとする動きが常にあったんですね。60年代頭の海賊ラジオ時代にしても、2000年代の2ステップ/UKガラージ、その後のダブステップにしても、現在のUKドリルにしても、サウス・ロンドンのインディ・ロックにしても、どれも産業の外側から生まれてきた。やはりエキサイティングなのはそちらだと思うんです。

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