重症心身障害児の親たちがコロナ禍で抱えるジレンマ

2020年9月8日、オハイオ州シュガークリークの自宅の庭でベラ・ヨンダーちゃんと両親 (Photo by Maddie McGarvey for Rolling Stone)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のロックダウンから数えて、約5カ月ぶりに通学を始めたベラ・ヨンダーちゃん。米オハイオ州に住む11歳の彼女はGM3合成酵素欠損症という難病の患者であり、身体が神経の成長に重要なGM3酵素を生成できなくなるという障害を抱えている。通学を再開すれば、再びCOVID-19の危険にさらされることになるが、このまま自宅に閉じこもっていると十分なケアは受けられない。彼女の両親はジレンマを抱えている。

ベラちゃんは摂食不耐性のため点滴で栄養を摂取する。コミュニケーションには音声合成装置を使う。介護椅子のヘッドレストに埋め込まれた小型スピーカーからささやかれる選択肢の中から、黄色いジョイスティックを操って単語を選ぶ。

学校が閉鎖される以前、ベラちゃんは1時間のスピーチセラピーでずっとしゃべり続け、その日の授業が終わる前にバッテリーが切れるほど音声装置を活用した。だがリモート学習が始まってからは話す機会がどんどん少なくなり、次第にふさぎ込むようになった。ベラちゃんの神経機能の低下に気付いた緩和ケアチームとスピーチセラピストは、学校に行かなくなったことや他人との交流が減ったことが関係しているのではと考えている。

そういった理由から、オハイオ州ホルムズ郡の学校に再び通い始めた。「危険が高いことは分かっています。でも私たちは、最終的に生活の質をとりました」と母親のヨンダーさんは言う。

ベラちゃんは複雑な医学的問題を抱える数十万人の子供の1人。こうした子の親は今、我が子を学校に再び通わせるべきかという難しい決断に迫られている。医学的問題の定義は様々だが、未成年者の2%にあたる約300万人の子供がこれに該当する、とワシントンDCのチルドレンズ・ナショナル・ホスピタルの小児科医、ナサニエル・ベアーズ医師が教えてくれた。人工呼吸器や栄養管といった「テクノロジーに頼らなくてはならない子供、または各自の疾患が複数の器官に影響を及ぼしている子供を指します」。ほとんどの場合、数々の成長遅延や発達遅滞を含む複数の疾患を併発する。合併症を引き起こすことも多く、COVID-19も例外ではない。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE