リンキン・パーク、2002年の秘蔵インタビュー「俺たちを強くしたのは不屈の精神」

チェスターを襲う幼少期のトラウマと依存症の問題

4人兄弟の末っ子であるベニントンは、昔からそんな風だったわけではない。「俺は両極端な子供だった」。彼はそう話す。「フラフラしてたけど、要領は悪くなかった」。彼が11歳の頃、看護婦だった母親と、30年にわたってフェニックス警察に勤務していた父親が離婚した。「長い間、父と2人で暮らしてた」。そう話すベニントンの父親は、小児性愛犯罪の捜査に長年従事していた。「毎日毎日クソみたいな事件を扱ってた父は多くのストレスを抱えていて、それを家で発散させることが多かった。俺は腫れ物に触るような緊張感に晒されてた」

初期のインタビューで、ベニントンは過去に経験した性的虐待とドラッグ依存について語っている。彼がそれを明かしたのは、歌詞の正当性を主張するためだった。「『あなたの曲には鬱や恐怖、パラノイア等が頻繁に登場しますが、あれは空想ですか?』なんて言われる度に、そうじゃないって答えてた」

その経験について改めて訊くと、ベニントンは慎重ながらも率直に、凌辱的な体験について語った。「家族の誰かから暴行を受けたことはない」。彼はそう明言する。「俺を辱めていたのは周囲の別の人間たちだ。崩壊した家庭で育った俺には、それが間違ってるってことがわからなかった」。その行為が許されることではないと彼が気づいたのは10代前半のことであり、その時点で彼は5年近くに渡って性的暴行を受け続けていた。

「ハイになっている間は、自分に自信を持つことができた」。彼はそう続ける。「幻覚剤かアルコールが体の中を回っている間だけは、自分を取り囲む環境に対して優位でいられるように感じていたんだ」。1996年にサマンサと出会った時点で、彼はコカインとメタンフェタミンを断つことに成功していた。しかし昨年秋に行われたリンキン・パークのツアー中に、アルコールへの依存癖が再燃した。「俺は誘惑に負けて、ロックンロールにありがちなクリシェに陥ってしまった」。彼はそう話す。他のメンバーたちは彼がストレスを抱えていることに気づき、ベニントンはモバイルスタジオのバスに1人で寝泊まりするようになった。

「自分のことを哀れむっていう、典型的なパターンさ」。彼はそう話す。「『クローリング』はそういう経験から生まれた曲だ。自分自身に耐えられないっていうね。でもあの曲の真のテーマは、自分の行動に対して責任を持つってことなんだ。曲中に『お前』っていう言葉は一度も登場しない。こんな風に感じる原因はすべて自分自身にある、そういうことを言わんとしてる。俺を暗闇に引きずり込もうとしているのは俺自身なんだ」。今年の1月2日、ベニントンは自らの意思でアルコールを断つことを決意した。現在の彼は完全にクリーンだ。



筆者と会ったサンタモニカのレストランで、チェスターとサマンサは彼の禁酒が今も続いていることを讃え、ミネラルウォーターで乾杯した。「次のレコードじゃ不満のはけ口が見つからずに苦労しそうだよ」。彼はそう話す。「今の俺は満ち足りてるからね」

Translated by Masaaki Yoshida

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