夏目知幸が語る、シャムキャッツに捧げた青春とこれから先に広がる景色

Rolling Stone Japan vol.11掲載/Coffee & Cigarettes 22| 夏目知幸(Photo by Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。昨年10周年を迎えたシャムキャッツが、2020年に突如解散を宣言。フロントマンの夏目知幸は声明の中で「このバンドに青春の全てを捧げた事を誇りに思います」と述べた。彼が見てきた景色、これから見る景色。いつもそこにはタバコがあった。


Coffee & Cigarettes 22 | 夏目知幸

「最近も仕事はたくさんやってますね。でも、これから半年は曲を作らない時期にしようと思っていて。そうしないと、真実味を帯びたものが出てこない気がする。いまはいろんなことを見つめ直す時期。新しい楽器を買って試したり、自宅の環境を良くするために機材やスピーカーを買い直したりしてます」

ヨ・ラ・テンゴのTシャツを着た夏目知幸が、気持ちよさそうにタバコを燻らせながら語る。相変わらずのイージーな佇まい。年齢を重ねるごとに表情は大人びてきた気もするが、少年のような瞳は無邪気さを保ったままだ。この光景だけを切り取るとアフターコロナのありがちな近況報告みたいだが、実はこのインタビューが行われたのは7月1日。彼が全てを捧げてきたバンド、シャムキャッツが解散を発表した翌日である。「やりにくいだろうなーと思いながら来ました」と夏目は微笑んでいるが、こちらとしても衝撃の展開である(オファーした時点ではもちろん知らなかった)。まずは野暮を承知で、単刀直入に尋ねてみた。

「なんか、解散することになったんですよね。詳しいことはあんまり言えない。特にファンの人達に対しては実直でいたいから、ちゃんと説明できればいいんだけど……。バンドってそこらへんが難しいし、だからこそ美しいのかなと。4人の中での約束事を大事にしようとすると、素直に言えることが少なくて。うん、そういう感じ」

それはそうだ。人生を賭けたものにピリオドを打つとなって、すぐに心の整理ができるはずもない。昨年12月のデビュー10周年公演を経て、2020年に入った時点では解散なんて頭になかったそうだから、その決心にはなおさら重みや潔さを感じてしまう。


Photo by Mitsuru Nishimura

2014年の人気作『AFTER HOURS』がリリースされたとき、ライターの九龍ジョー氏は「ある時期のくるりが、ある時期のサニーデイ(・サービス)が握っていたバトンがあって、いまはシャムキャッツの手の中にある」と評していた。インディの価値観と共に育った人間にとって、シャムキャッツは精神的支柱ともいえる存在だ。4人のメンバーは千葉・浦安で育った幼なじみだが、単に付き合いが長いだけでなく、凸凹な個性が噛み合うことで奇跡的に成り立っていたバンドでもある。それゆえの愛おしいヒューマンドラマや、日常とファンタジーが淡く溶け合った音楽の輝きに、終わらない青春を期待していたのは自分だけではない。実際、SNSもそういった声で溢れていたが、夏目にそれを伝えると、ジョニー・ロットンのような回答が返ってきた。

「まあ、世の中にそんなもんないですよ。そういうこと言ってる人達には、ざまあみやがれって思う。そんなに甘くねえよって」

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