WONK密着取材で迫る、未来的バーチャルライブの舞台裏

楽器演奏の表現は超難問、「バンド」だからこその挑戦

ライブ当日の17時過ぎ、WFLEのスタジオに到着すると、コントロールルームでは15人ほどのスタッフがモニターを見つめながらシステムをチェックし、その奥のスペースにすでにメンバーたちがスタンバイしている模様。部屋の外で待機する配信担当含め、常時20人ほどがフロアをせわしなく動く中、「Depth of Blue」の演奏が始まり、タイムキーパーが細かく時間を刻みながら、最終の確認が進められていく。そして、長塚のMCから「In Your Own Way」までの流れを終えると、リハーサルが終了し、メンバーのいるスタジオ内へと入らせてもらった。



上:モーションキャプチャースーツを着用した井上。下:3DCGにモデリングされた井上のアバター。頭上と正面のカメラが、メンバーの全身と楽器に装着された球状のセンサーから位置情報を検知することで、身体の動きがアバターと連動する仕組み。

スタジオの中にはVICONスーツと呼ばれるモーションキャプチャースーツに全身を包まれたメンバーが、通常のライブと同様のポジションで並び、部屋の壁にはたくさんのカメラがメンバーを囲むように取り付けられている。「バーチャル空間での3DCGライブ」と聞くと、最近ではテレビ番組でもすっかりお馴染みの光景となったグリーンバックをイメージする人も多いかもしれないが、リアルタイムのモーションキャプチャーで、バンドによる楽器演奏を細部まで表現するというのは、かなりの試行錯誤を必要とするものだったようだ。プロデューサーとして参画したWFLEの坂田悠人は言う。

「今回メンバーに着ていただいたスーツにはたくさんのセンサーがついていて、そのセンサーをカメラで映して、データを読み取って、実際の体の動きを3Dモデルの動きと連動させているんです。ただ、メンバーが4人いて、かつ楽器があるので、どうしても死角が生まれてしまって、それでセンサーが消えてしまうと、変な動きになってしまう。なので、その死角を作らないようにメンバーの配置を考えたり、カメラの台数を増やしたり、物理的に工夫することで、4人が密着した空間でパフォーマンスをしても、誰も体がぶれない状態を作り出そうとした。それは非常に難しかったですね。一番簡単なのは、4人を別々の部屋にすることなんです。でも通常のライブと同じ状態じゃないと、メンバー同士の目配せとか、演奏しながらのコミュニケーションができないので、あえて一部屋にまとめて、いつも通りのパフォーマンスを行えるようにしたのはこだわった部分です」

長塚の前にはモニターが設置され、アバター化した自身の動きがチェックできるようになっているのだが、その周りに貼られたMC用のカンペを見たときに、映像に映る自身の目線に違和感があったようで、カンペの位置の変更を要求。スタッフがガムテープでカンペを貼り替える様子を見ていた江﨑文武(Key)は「夏休みの工作みたいになってきた」と笑う。




カラフルに光る衣装、演奏とシンクロした照明エフェクトに加えて、ステージを舞う蝶々やクラゲ、夜空を飛び交うレーザーといった派手な演出もリアルタイムで操作。自在に飛び回るカメラワークもバーチャルならでは。




上:ライブ配信中の3DCG制作。下:カメラ割りの様子。

Photo by Shintaro Kunieda, Naoki Sato

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE