【密着ルポ】若きバンドの挑戦、FAITHが無観客配信+ライブハウスで見せた「生と死」の物語

FAITH「Pre-independence Day」(Photo by Kazushi Toyota)

今年2月に彼らの地元・長野県伊那市で密着取材を行って以来、約8カ月ぶりに再会したFAITHの5人は、なんというか、すごく大人になっていた。

スタイリッシュな衣装に、バチッと決まったヘアメイク。ちょっと気圧されるぐらいの雰囲気が漂っていた。しかし、リハーサル前に5人揃っての撮影が始まると、あっという間にいつものわちゃわちゃした空気が生まれる。そんな姿を見てちょっと、安心した。しかし、FAITHはメンバー全員が20代を迎え、これからジワジワと大人の世界へと足を踏み入れていく。子供と大人の狭間の、不安定で、フワフワしていて、なんだかとにかく楽しい一方、未来へ向けて漠然とした不安を抱く時間。彼らが初めて主催するワンマン生配信ライブ「Pre-independence Diary」は、そんなときに開催された。

会場は代官山UNIT。といっても、ステージがつくられたのは客席フロアだ。様々な照明や電飾、オシャレな小物で飾り付けられ、ちょっとしたプライベート空間が生まれていた。

リハでは、iPhoneで撮った映像を見ながら、自分たちの映り方を確認したり、メンバーを捉えるカメラがどこにあるかを細かくチェック。そして、通しリハ、カメラリハと丁寧に最終確認を行っていく。メンバーもさぞ緊張しているかと思いきや、リハの間にふざけあったりしていて、気負った様子はないように見えた、このときは。

本番まで30分を切ると、いったん楽屋に戻った5人はわかりやすいぐらいに緊張していた。「あ~、緊張する!」と地団駄を踏み、薄笑いを浮かべる荒井藤子(Ba)、「リハのテンション、最高だったな」と自分に言い聞かすように独りごちるヤジマレイ(Gt&Vo)、ひと言も発しないルカ メランソン(Dr)、そして、じっと一点を見つめるAkari Dritschler[アカリ ドリチュラー](Vo)。そんな様子を見てこちらも何かせずにはいられなくなり、「リハの感じでできたら最強だと思ったよ!」とレイ キャスナー(Gt&Vo)に声をかけると、「今のひと言でだいぶラクになりました!」と彼は引きつった笑みを浮かべた。ああ、彼らは内なる自分と戦っているんだ。外部の人間にできることなんて何もないんだ。そう気付いてすぐに楽屋から退出し、スタッフが詰めているステージ裏へと移動した――。

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