スティーヴ・ペリーが語る、エディ・ヴァン・ヘイレンとの「ロック史を変えたかもしれない出来事」

「ワカモレ事件」の真相

本当のことをいうと俺は、あのツアーでは、エディとはそんなに多くの時間を一緒に過ごしていたりはしなかった。連中にいかにもパンクっぽい“てめえらクソ食らえ”みたいな空気があったことも事実でね。俺とはあまり一緒にいてくれなかった。ニールはエディといろいろつるんでいたようだけれど、俺はそうじゃなかった。

だけどある晩、ちょっと顔を出してちゃんと言葉にしておこうと決めたんだ。君ら最高だよってさ。それで連中の楽屋のドアを開け、やあ、とか言いかけたんだ。するとだ。いや、あの頃のワカモレっていうのはカッテージチーズみたいな容れ物に入れられて出てきてたんだけれどさ、バンドはまさに食べ物を投げつけあってやりあってる最中だったんだよ。俺がドアを開けたまさにその瞬間だ。そのワカモレの容器がちょうど鏡に跳ね返って俺の左側へと飛んできて、当時まだフレズノから出てきたばかりのガキだった俺が一番誇りに思っていたものに見事に飛び散ったんだ。サテンのツアージャンパーだよ。背中に“ジャーニー”のロゴが入っていた。これを着て初めてあの頃の俺は、自分がようやく何ものかになれたように思えていたものだった。

ワカモレが左の肩から腕にかけてを汚していた。そいつを見下ろしてから俺が目を上げると、連中は、やっちまったぁ、みたいな顔で決まり悪そうに笑っていたよ。俺も見ただけですぐにドアを締めちまった。腹が立っていたんだ。それでトイレに行ったんだけれど、腹立ちがおさまるはずもなかった。だって我が誇りのジャケットだったんだ。連中を好きな気持ちは変わらなかったけれど、でもこの一件の後ではそれを直接伝えることはもうできなくなっていた。そしてサテンの上着からワカモレを拭った。

(編者註:この一件の後、トイレで泣いているペリーの姿を目にしたという記事が一部に出回った)

いや、泣いたりなんてしてはいないさ。ワカモレで泣く訳ないだろう(笑)。ある段階で都市伝説みたいになったんだよ。バカバカしい。

Translated by Takuya Asakura

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