矢沢永吉がロックで上り詰めるまで 1970年代の楽曲とともに語る

アイ・ラヴ・ユー, OK / 矢沢永吉

1975年9月発売のデビューアルバムのタイトル曲、そしてデビューシングルでもありました「アイ・ラヴ・ユー, OK 」。この曲が、『STANDARD~THE BALLAD BEST~』の中ではライブ音源で収められているんですね。2018年の「EIKICHI YAZAWA 69TH ANNIVERSARY TOUR 2018 - STAY ROCK -」、69歳の時の東京ドーム公演の様子が収められています。この曲は矢沢さんが18歳の時に書いたものですが、50年後にこんな風に歌っているわけです。キャロルが解散したのは1975年4月で、1stアルバムと1stシングルである『I LOVE YOU,OK』がリリースされたのは1975年9月。キャロルの炎の日比谷野音公演は4月、この1ヶ月後の5月に矢沢さんは単身でロサンゼルスに渡って、現地のA&Mスタジオでレコーディングしています。曲は全部用意してありました。「I LOVE YOU,OK」は18歳の時の曲ですから、キャロルを組む前にすでに曲は出来ていた。こういう曲があったからこそ夜行列車に乗って上京したとも言えるでしょうね。でも、「I LOVE YOU,OK」を東芝とソニーに持ち込んで相手にされなかったというエピソードもあります。そして、このデビューアルバムの制作費は彼の個人で負担したんですね。キャロルの印税はそこで全部使った。でも、キャロルはまだ前のレコード会社とまだ契約が残ってる時に解散したので、レコード会社には違約金を払わなければいけなかった。その違約金は新しいレコード会社のソニーから借りて、レコーディング費用は全部自費で出した、そんな始まりでした。『I LOVE YOU,OK』からもう一曲、「恋の列車はリバプール発」。

恋の列車はリバプール発 / 矢沢永吉

軽快なロックンロールですね。今月、矢沢さんの特集をやろうと思ったのは、8月にエルヴィス・プレスリーの特集をしたからですね。あの時に矢沢さんもやらないといけないなと。キャロルで矢沢さんを初めて聴いた時に、うわ、エルヴィスだ! って思ったんですね。日本のアーティストの中で、身体を突き動かすロックの衝動、ビートが音楽や歌になっている人は、僕の中で矢沢永吉さんと氷室京介さんくらいしか思い当たらない。もちろん色々な人が居ますが、その中でもエルヴィスを想起させる瞬間があるのはこの2人だと思ってます。でも、矢沢さんのソロの船出は嵐の中でした。当時はキャロルのイメージ、革ジャンとリーゼントのロックンロールのイメージがあったんですが、矢沢さんはそのイメージをかなぐり捨ててましたからね。それを捨てるところから自分で決めて、ロサンゼルスに行かれた。最初のソロツアーは散々だった。僕が見たのはそのツアーの中野サンプラザ公演だったんですが、客席からは「これ、永ちゃんじゃねえよ」というブーイングもありました。そこから始めて、1976、1977年に「33,000MILE ROAD JAPAN」というツアーで日本中を回ってきて、時には会場からの拒否という目に遭いながら日比谷野音公演も行なった。“帰ってきたぞ!”の野音です。その後に発売されたのが1977年に発売されたのが、アルバム『ドアを開けろ』でした。この中からもう一曲、「世話がやけるぜ」。

Rolling Stone Japan 編集部

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