WONKが3DCGライブを経て、「ジャズの聖地」で提示した確固たるルーツ

WONKの長塚健斗(Photo by Kihara Takahiro)

WONKが11月1日、ブルーノート東京でワンマンライブ「Blue Note Tokyo Live 2020」を開催した。WONKがブルーノート東京に出演するのは、ニューヨークのThe Love Experimentと共演した2018年1月以来、約3年ぶり。この3年でWONKのポジションは大きく変化したと言っていいだろう。

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2018年1月というと、前年の9月に『Castor』と『Pollux』を2作同時リリースし、10月にはブルーノート・レーベルとのコラボで、バンド名の由来でもあるセロニアス・モンクの生誕100周年記念トリビュート『MONK’s Playhouse』、11月には前述のThe Love Experimentとの共作『BINARY』と、立て続けに作品を発表した後のタイミング。おそらく、当時の公演にはジャズとヒップホップのクロスオーバー、フィーチャーソウルの台頭に敏感な音楽ファンが集っていたはず。

しかし、もともとそれぞれ独自の音楽性とキャラクターを持つ各メンバーが個人でも活動し、同時に主催イベント「WONK’s Playhouse」で幅広いアーティストと交流を持つことで、徐々にバンドの枠組みを広げていくと、サポートとしての参加などで交流の深いKing Gnu/millennium paradeのブレイクや、香取慎吾との「Metropolis(feat. WONK)」などもあり、リスナー層がグッと拡大。さらには、料理人としての顔を持つ長塚健斗がCookpadTVや地上波のテレビで料理の腕前を披露したことも大きな話題に。2020年のWONKは、かつての「J.ディラの系譜にあるビートミュージックを生演奏するエクスペリメンタルソウルバンド」ではなく、「様々な人やカルチャーと混ざり合いながら、他の誰もやってないことをするバンド」という独自のブランドを作り上げていった。

その現時点での決定打と言えるのが、8月に行った「『EYES』SPECIAL 3DCG LIVE」。最新作『EYS』のSF的な世界観をそのまま再現したこのオンラインライブでは、音楽系VTuberのプロデュースで実績のあるWright Flyer Live Entertainmentとタッグを組み、自らがアバターとなって、仮想空間でのライブを実現。海外ではトラヴィス・スコット、日本では米津玄師らが開催した『フォートナイト』のイベントをはじめ、各所でメタバースの表現が追及される中にあっても、バンドの演奏を仮想空間で行うというのは、他に類を見ないもの。多様性を尊重する現代的なメッセージ性も含め、強く印象に残るライブだった。

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有観客で行われた今回のブルーノート公演は、デジタル色の強いオンラインライブの真逆とも言えるアコースティックセットで、新旧の曲を織り交ぜたセットリストを披露。早稲田のモダンジャズ研究会で出会い、それぞれビル・エヴァンスとスティーヴ・ガッドからの影響を公言する江﨑文武と荒田洸にとってはもちろん、バンド自体にとっても、聖地ブルーノートでのワンマンは、原点確認的な意味合いを帯びていたはずだ。

Photo by Kihara Takahiro

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