キース・リチャーズが語るロックンロールの真髄、最高のリフを作る秘訣、BLM運動への共感

チャック・ベリーとの真の友情

―『Live at the Hollywood Palladium』で、前にパラディアムのステージから放り投げられたと冗談を言っています。チャック・ベリーは1972年にあなたをステージから振り落とし、のちに彼はそれがキース・リチャーズとは気付いていなかったと言っていました。この冗談はその時のことですか?

キース:そう、それだよ、それ。俺もチャックを振り落としかけたもん(笑)。でも、チャックと俺の間には本物の友情があった。お互いを大好きになったんだが、お互い嫌っているって世間には思わせなくてはいけなくて……その理由が何だったか、俺にもわからない。あの男との仕事は本当に誇らしかったよ。それに、彼に良いバンドを提供できた(ドキュメンタリー作品『チャック・ベリー/ヘイル・ヘイル・ロックンロール』)のだって、金や義理じゃなくて、好きでやったことだった。彼の音楽が大好きで、彼らが自分に与えたくれた音楽が大好きで、それを後世に残せるなんて、本当に幸せなことだよ。

―あなたは以前、チャックは自分自身の価値やインパクトを全く評価していないと言っていましたが、あなた自身はどうですか? 音楽におけるあなたの価値やインパクトをどう考えていますか?

キース:俺も評価していない。知っているのは人がそう言うからってだけ。チャックのことは理解できる。チャックはそういう自負がゼロだ。彼にとって「朝起きて学校に行く」くらい日常的なことなのさ。(歌いながら)「ジョニー・B・グッド」さ。彼はいろんな曲を出したけど、文化的な重要度とか、そういった点では自負なんてまったくなかったよ。その日に起きた嫌な出来事を歌にしただけなのに、それをとてつもなく上手くやっていただけ。それも無意識にね。「メンフィス・テネシー」は俺が聞いた中で一番美しい詩だ。チャックは歌の歌詞を書いただけであの男はその美しさに全く気付いていないんだよ。

―彼自身がそれに気付いていなかったのは残念ですね。

キース:そうだけど、彼も晩年は自分が作ってきた作品の重要さを理解し始めたと思うし、これは素晴らしいことだ。ただ、彼自身に自負はなかった。チャック・ベリーは天国にいるよ。疑いの余地はない。あんな曲を作れるのはあの男以外にいなかったし、みんなロックンロールがなきゃ嫌だろ? 今、バンドが奏でるロックンロールが存在する。チャックは完璧なバンドと完璧なスタジオを所有していた。最高のロックだよ。なあ、もう褒め言葉が見つからないから、これ以上は何も言えないよ。

Translated by Miki Nakayama

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