ROTH BART BARONに学ぶ、コロナ時代の新たなバンドカルチャー

ROTH BART BARONの三船雅也、黒鳥社の地下スペース「黒鳥福祉センター」で撮影(Photo by Yuri Manabe)


ミュージシャンは新しい社会のモデル

小熊:最後に、これから始まるロットのツアーも踏まえて三船さんに伺いたいんですけど、コロナ以降はクラファンもそうだし、配信ライブも音楽業界にとって応急処置的な側面を担ってきたのは否めないと思うんですよね。配信ライブがネガティブな意味での「代替品」を超えるためには、何が必要になってくると思いますか?

三船:僕たちアーティスト側ができることとしては、「レンズの向こう側の人に対して、どう音を伝えるのか?」をアーティスト自身が意識してパフォーマンスすること、その経験値を得ることだと思います。

若林:これまで、それは経験としてはあんまりなかったということですか?

三船:なかったですね。今年初めて養われたというか。でも、だいぶ慣れました。演奏後に拍手がないこととか。

若林:それは例えば、昔の歌謡曲の歌手とかにはあったかもしれないってことですよね。テレビが前提だった時代の人には。

三船:そうかもしれない。でも、いまはいろんな業界で「1年生からやり直し」と言われているけど、僕はその感じは嫌いじゃないんです。だから配信ライブも、応急処置というよりは「新しい要素がひとつ増えた」という捉え方をしてます。ただ、配信ライブの場合は金をかけた者勝ちというか、機材の性能への依存度が高いからものすごい格差が生まれやすい。そこが懸念事項ではあるけど、どうブレイクスルーしていくのか。自分たちマターでどこまでできるのかっていうのは大いなる実験だと思いますね。

若林:ヴィンセント・ムーンの「Take Away Show」みたいな、ああいうアイデアというか文法がまた開発されていかないとですよね。



三船:そうですね。そういった体験を映像表現とライブミュージックという形でプラスアルファできる、新しい表現が生み出せるんじゃないかっていうのは、アーティスト全員がいま考えなきゃいけないことかもしれないですね。

あと言えるのは、日本がコロナ禍に入ってからの10カ月で、ほとぼりが冷めるまで待つタイプの人と、これを機会に何か新しいことに挑戦しようとする人、戻りたがる人と進みたがる人に分かれましたよね。僕の場合は後者で、『どうぶつの森』の世界みたいなアバターの前でライブすることもやってみたい。そこがモーションキャプチャーとかで、現実とコネクトしている世界だったらなおさら。もちろん、資金が何億円あっても足りないんだけど、そこでアバター用のTシャツとかを売りたい(笑)。

若林:配信が難しいのは希少性をどうつくれるのかというところだと思うんです。生のライブは「会場キャパが100人」という物理的な制限のなかで希少性と価値が生まれていたわけで、どのステージも同じ内容だったとしても、その希少性のおかげで問題にならなかったわけですが、ツアーの全公演を配信するとなると、同じ内容を2度配信するわけにも行きませんし、セットリストも変えないとですよね。今回のロットみたいにほぼ全公演を配信するとなると「内容をどうするのか?」「衣装をどうするのか?」「何か仕掛けが必要なのか?」とか、そういう問題も出てきますよね。

三船:そこはたしかにそうですね。僕らの場合、もともと極めて自然な形で毎回セットリストが違うから、毎回違う瞬間を生み出せるだろうというのが一つ。あと、今回のツアーは会場がいろいろと面白くて。北海道だとイサムノグチの”ガラスのピラミッド”の中でやったり、他にもお寺や倉庫でやったりとか、そういった場の空気感も楽しんでもらえると思います。それと、途中にカバー曲コーナーを設けよう思っていて。以前、若林さんに相談したらテレサ・テンをリクエストされて(笑)。

若林:「香港」という曲と「悲しき自由」という曲を、この間の香港の問題を念頭に歌ってみたら面白いかなと思ったんですけどね。難しいですよね(笑)。あとは、T・レックスはどうかな、と。

三船:T・レックスはやりたいですね。「若林ナイト」をどこの公演にするのか考えないと……。

小熊:本当にやるんですか(笑)。でも、今日の話を聞いていても、「考えるよりやってみる」という三船さんのスタンスは、これからの時代、ますます強い気がします。

若林:人とちゃんとコラボレーションできるっていうのは、ミュージシャンに限らず、どんな仕事でも大切な資質になってくるんだろうなとは思うんです。それこそイギリスにブリットスクールという芸術学校がありますけど、そこで教えてるのもそれだっていうんです。ライブ公演はとくにチームワークになるわけですから、自分のポジションを知ってるだけではダメで、出演者であっても、照明やPAなどのポジションを体験させられたりするというんです。そうやって他人の意見にオープンに耳を傾けられる資質を育てていくそうなんですが、卒業生のアデルなんかでも、そういう訓練を受けているそうで、だからアデルはスタッフに対して非常にオープンでフランクなんだそうです。そういう意味では、そうした音楽家のありようは、これからの新しい社会や働き方の先行モデルになっているのかなと思ったりします。

三船:いろんなことを習得しながら自分の得意技を見つけつつ、足りないところをチームエフォートしていくのは大切ですよね。その時に一番大切なのは、何もわからないままチームを作るより、まずは全部やってみてから考えること。今だったら配信ライブも音楽も、アーティストは自分たちで全部やらなきゃいけない。この10カ月はそんなふうに焦っていろいろやって失敗しまくってる、みたいな時期でもあったんですけど(苦笑)。

若林:でも、それは何ひとつムダにならないですよね。

三船:うん。傷ついている人がたくさんいるから「楽しい」とは言いづらいけど、この状況で自分が成長している感覚はあります。新しい扉を開けている感じっていうのかな。


「コロナ時代の新たなバンドカルチャー」では本編終了後、三船によるギター弾き語りライブも実施。ピクシーズ「Debaser」のカバーも披露された。(Photo by Yuri Manabe)




ROTH BART BARON
『極彩色の祝祭』
発売中
視聴・購入:https://ssm.lnk.to/LoudColrsSilenceFestival


ROTH BART BARON Tour 2020-2021『極彩色の祝祭』

2020年
11月7日(土)広島・クラブクアトロ|主催:広島クラブクアトロ
11月14日(土)静岡・浜松 舘山寺|主催:MINDJIVE
12月5日(土)京都・磔磔
12月11日(金)東京・渋谷 WWW <追加公演>
12月12日(土)東京・渋谷 WWW - SOLD OUT -

2021年
1月16日(土)愛知・名古屋 The Bottom Line|協催:jellyfish
1月21日(木)福岡・百年蔵|主催:BEA
1月22日(金)福岡・the Voodoo Lounge|主催:BEA
1月23日(土)熊本・早川倉庫|主催:BEA
2月6日(土)石川・金沢 Art Gummi - Guest Act:noid -|協催:Magical Colors Night
2月7日(日)富山・高岡市生涯学習センター1F リトルウィング|主催:Ishi-G 雑楽工房, Songs 音創会
2月13日(土)大阪・梅田 Shangri-La|主催:SMASH WEST
2月20日(土)北海道・札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド|主催:WESS
2月21日(日)北海道・札幌 Sound Lab mole|主催:WESS
2月23日(祝・火)宮城・仙台 Rensa|主催:Coolmine

ROTH BART BARON『けものたちの名前』Tour Final
2020年12月26日(土)・27日(日)東京・めぐろパーシモン大ホール
*5/30の延期振替公演


ROTH BART BARON "POP UP STORE & EXHIBITION"
2020年11月21日〜11月24日
KATA(LIQUIDROOM 2F)

ROTH BART BARON公式サイト:https://www.rothbartbaron.com/

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