エルトン・ジョンも魅了したTikTok発の新星、サーフェシズが世界中から愛される理由

古き良きポップの伝統に則った作曲術

その「Sunday Best」をタイトルに冠し、ユニバーサルミュージックジャパンが独自にコンパイルしたのが、今回のアルバム『Sunday Best』だ。エルトン・ジョンとコラボレーションした「Learn To Fly」や、9月にリリースされたばかりのシングル「Sail Away」が収録されており、サーフェシズの集大成にして現時点でのベストアルバムのような選曲、構成になっている。

『Sunday Best』をじっくり聞いていると、リラクシンな響きとはうらはらに、音楽家としての2人の視野の広さやどん欲さが見えてくる。ここまでに言及したローファイヒップホップ風のビートは「Heaven Falls / Fall on Me」で聞くことができるし、ボサノバのリズムは「Good Day」に取り入れられている。さらに「Sail Away」はレゲエで、「Bloom」はディスコ/ハウスだ。また、サーフェシズはスティールパンの音色を効果的に使っているのが特徴で、そのふわっとした響きは、彼らがアートワークで表現している淡いランドスケープ(海、砂浜、太陽……)のイメージを聴き手の頭の中に浮かび上がらせる。



音楽的な要素は様々だし、現代的な意匠が凝らされているものの、ポップソングとしての完成度の高さはサーフェシズの楽曲に一貫している。彼らの楽曲には、シンコペーションしたシンプルなピアノのリフで始まり、そこからメロディが紡がれて楽曲の根幹をなしているパターンが多い。そういったソングクラフトにはどこかランディ・ニューマンやハリー・二ルソン、キャロル・キングなどを思わせるところがあり、サーフェシズの音楽が多くのひとびとの心をつかんで離さないのは、古き良きアメリカンポップの伝統に連なっているから……というのは考えすぎだろうか(そういえば、ヴァン・ダイク・パークスは「アメリカ発見(Discover America)」と題したアルバムでカリプソに挑み、スティールパンを大々的に取り入れていた)。

だから、アメリカのソウル/R&Bやシンガーソングライターから強く影響を受けているエルトン・ジョンが「Sunday Best」に惚れこんで、「Learn To Fly」で共演した、というのはとても納得のいくストーリーだと思う。ゴスペル風の「Learn To Fly」という曲も、ビートは今様だが、セブンスの響きを活かしたとてもシンプルなコードワークで、切なくソウルフルなメロディが胸に迫る。


サーフェシズとエルトン・ジョン



Instagramを見ると、2月にリリースされた『Horizons』に続く4作目のアルバムの制作に着手しているようだし、2人からは早々に新しい音楽が届けられそうだ。快進撃を続けるサーフェシズがロックダウンを強いられているリスナーたちにどんな風景を見せてくれるのか、音楽でどんな場所へ連れていってくれるのか、次のアルバムが楽しみでならない。




サーフェシズ
『サンデイ・ベスト』
発売中/2,750円(税込)
試聴・購入:https://umj.lnk.to/SundayBest_ALMB

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