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起源は旧約聖書? UFOカルチャー史

その通り、UFO信者は皆狂っている。いや、その言い方には語弊がある。UFOカルチャーの住人は皆、その世界における自分以外の人間は全員狂っていると考えている。UFO学というのは、キリスト教の異なる宗派のようなものだ。同一の神を信奉しながら、カトリックはバプティスト派を敵視し、バプティスト派は監督派を目の敵にしている。彼らは結束という概念を持たない。筆者が何を書こうとも、UFO信者の多くはそれを馬鹿げていると一蹴し、中には筆者をCIAの回し者と見なす人もいるかもしれない。

その起源まで遡ってみよう。信者の中には、UFOは旧約聖書の頃から存在していたと主張する者もいる。エゼキエルは預言書で、4人の天使が動かす車輪によって進む「空飛ぶ馬車」に言及している。そして預言者が目にした神の描写は、あろうことか、宇宙人を強く連想させる。「腰から上は炎によって融解した金属のようであり、下半身は炎そのもののように見えた。その全身は、眩いほどの光に包まれていた」

これは神のイメージとは程遠い。不可知論者たちは古代シュメールにおける文明の誕生とアルファベットは結びつかず、そこに何かしらの大きな力が介在したに違いないと主張している。興味のある人は、ヒストリー・チャンネルの番組をチェックしてみるといい。

UFOを巡る人々の歴史には、常にUFOを用いた嘘がつきまとった。19世紀にチベットで発見された『ジャーンの書』には、インドに定住した地球外生命体についての記述が見られる。その生物は人々と親しくなろうと努めるが、関係が悪化すると人々の目を眩ませ、空気を毒してから宇宙へと消えていく。

同書はヨーロッパで大きな反響を呼んだ。しかし残念なことに、研究者たちは欧州人のヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキという素敵な名前の神秘主義者が、1890年に古代文字を用いてそれを執筆したことを突き止めた。

オーソン・ウェルズによるラジオ劇『宇宙戦争』は、信者を騙すことがこのムーブメントの主なテーマであることを示す好例だ。火星人の襲来というプロットを真に受け、リスナーたちは丘の上に避難しようとした。

1940年代から戦後にかけて、UFOムーブメントは本格化する。戦時中はあらゆる国の軍が、赤い光を放ちながら空中を高速で移動する飛行物体(後に「フー・ファイター」と呼ばれるようになる)を目撃している。彼らは皆それが敵国の秘密兵器だと信じ恐れたが、それは事実ではなく、その正体は未だ明らかになっていない。

戦争が終わってからも、未確認飛行物体への関心は途絶えなかった。1947年、ニューメキシコ州のロズウェル陸軍飛行場から30マイル離れたところで、飛行体の墜落事故が発生した。軍は当初それがUFOだと述べたが、ほどなくしてそれが実験的な観測気球だったと訂正した。世間の多くはその発表を信用せず、75年近く経った現在でも、それが宇宙人の乗り物だったとする説は根強く残っている。


第8空軍司令官ロジャー・M・レイミー大将と第8空軍参謀長トーマス・J・デュボース大佐は、米ニューメキシコ州ロズウェル近郊の農家で発見された金属片を、気球の破片であると特定した。これが、異星人の宇宙船が墜落したとされる「ロズウェル事件」の根拠となっている。(Photo by Bettman/Getty Images)

ネバダの砂漠はUFO信者たちに人気のスポットとなった。基本的に南西部はカリフォルニアに向かう際の通過点でしかないため、その盛り上がりは奇妙に思えた。1950年代に映画監督のジャック・アーノルドが、『それは外宇宙からやって来た』をはじめとする安っぽいホラー映画の数々をここで撮影し、退屈でしかなかった砂漠を超常現象のホットスポットへと生まれ変わらせたことは、現在の状況と無関係ではないだろう。

UFOムーブメントは、過去50年間で浮き沈みを経験した。男性や女性が宇宙人に誘拐される物語は、クラシックなサブジャンルとして定着する。60年代には議会がUFOに関する聴聞会を開き、空軍はその調査を目的とする特別部隊を立ち上げたが、目撃情報をことごとく否定した。それらはProject Sign、Project Grudge等と名付けられ、そのひとつであるProject Blue Bookはヒストリー・チャンネルの番組になっている。

やがて、スティーヴン・スピルバーグの『未知との遭遇』と『E.T.』が公開される。また文明の黎明期から宇宙人が地球を行き来していると主張した本『未来の記憶(原題:Chariot of the Gods)』は、歴史学者たちから一蹴されたにも関わらず6700万部を売り上げる。UFOカルチャーはメインストリームとなり、90年代には『X-ファイル』等が人気を集めた。

Translated by Masaaki Yoshida

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