触る、舐める、挿れる、極悪ポルノ男優の所業が長年見過ごされてきた理由

ポルノ業界という特殊な世界

だがローリングストーン誌が取材したポルノ女優の多くが、ジェレミー氏の行為はポルノ業界でも尋常ではないと言っている。誰からも愛される男という表向きのイメージを隠れ蓑にして、ジェレミー氏が、他の出演者の同意を無視していると言う者もいる。公共の場では、そうしたふるまいはよく言えば倫理的にいただけない行為、悪く言えば犯罪行為とみられるだろう。

「ロンは異常だと思います。性的いやがらせや性的暴行をしてまんまと逃げおおせられる人が、彼以外にいるとは思えません」。ポルノ業界歴20年以上の人気女優、ジュリア・アンさんもこう言う。「ホテルの部屋やコンドミニアム、オフィスや車の中でするのもどうかと思いますが、彼の場合コンベンションの真っ最中にするんですから」

【画像】「ロンは異常者」と語るポルノ業界歴20年以上の人気女優、ジュリア・アン(写真)

ポルノ女優のアンバー・リンさんは、ジェレミー氏のような男性の行為を「盛りのついた犬」とたとえた。「こちらの意志をはっきり伝える必要があります」と彼女は言う。

ローリングストーン誌が取材した俳優は、ポルノ業界でも基本的に同意を非常に重視していることをふまえれば、ジェレミー氏が行ったとみられる行為は極めて非道だと述べた。この業界では、スター俳優なら共演したくない俳優の「NGリスト」がある。またほぼすべての性行為を撮影前に細かく打ち合わせ、どこまでOKかを話し合っている。

ポルノ業界でも、同意の原則に違反して大問題になった例は2~3あるものの(有名なポルノ男優ジェイムズ・ディーン氏の性的暴行容疑など)、セックスワーカーたちは同意の確認の重要性を肝に銘じるようになっている。性的にどこまでOKか、境界線を話し合うのが慣例になっているのが主な理由だ。「ドルマークが関わる場合、実際のところ(同意の)線引きはより一層明確になります」とジュリア・アンさんも言う。

ジェレミー氏から性的暴行を受けたと告発した人々の大多数が、一時期ポルノ業界やセックス業界に携わっていたことも見過ごせない。

ポルノ業界ではよくあることだが、たとえ合法的だとしても、性業界には偏見が付きまとう。性的暴行や暴力事件の発生率も極めて高い。はっきり数字を出すことは難しいが、2014年、学術誌アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリックヘルスがセックスワーカーに対する性的・身体的暴力についてまとめた世界的統計によると、セックスワーカーは45~75%の割合で職場での暴力を受ける可能性が高いという。

にもかかわらず、警察に通報されるケースはごくわずかだ。明らかに、セックスワーカーが名乗り出ても警察から非難されるか、信じてもらえないのが関の山だからだ。

Translated by Akiko Kato

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