ジミー・ペイジが大いに語る、レッド・ツェッペリンの歩みとギタリスト人生

ジョン・ボーナムとドラム革命

ーレコーディングする部屋の雰囲気に集中する訓練を積んでいたことが、ジョン・ボーナムのドラムをプロデュースする上で役に立ったでしょうか?

ペイジ:ドラムは難しい。僕はスタジオミュージシャンとして、世界屈指のドラマーと仕事をしてきた。彼らは最高のドラマーだった。そして本当に素晴らしい音を出すドラマーを、孤立したブースに閉じ込めるのを見てきた。アクリルガラスでも使わない限り、彼らの姿を見ることができない。また、全楽器の音を抑えようとしているため、ドラムの音も聴こえない。録音した音を聴き返すと、全力で演奏したドラマーはがっかりする。箱の中に閉じ込められたような音がするからだ。ドラムのハーモニクスは、防音壁やボリュームを絞ることで損なわれてしまっていた。アコースティック楽器の魅力を奪っていたんだ。

僕はすぐにそのことに気づいた。だからジョン・ボーナムのドラムを聴いた時、直感的にどうすべきかを理解した。彼の上方にマイクを設置することで、彼のドラムから出る全てのハーモニクスを捉えることができた。彼も、自分のドラムをどうチューニングすればよいかを心得ていた。実際に彼は、曲のキーに合わせてチューニングを変えている。そうやって距離を保ち、マイクで音の奥行きを作ったのさ。



ー「レヴィー・ブレイク」などの曲では、彼がドラムを叩いている部屋の音響がよく聴き分けられます。

ペイジ:ヘッドリィ(グランジ。バンドが4枚目のアルバムをレコーディングした石造りの家)で僕らはまず、リビングルームでレコーディングを始めた。すると2台目のドラムキットが出てきた。僕らは気付かなかったが、広いホールに設置されていたんだ。ジョン・ボーナムが叩いてみると、3階まである吹き抜けのホールに反響した。木製の階段やタイル張りの床など、素晴らしい反響音が得られる環境だった。全てのドラムが広々とした空間で鳴っている感じだった。僕はそのドラムの音を聴いて、どうすべきか頭に浮かんだ。「レヴィー・ブレイク」は元々、スタジオでは「If It Keeps on Raining」というタイトルでレコーディングしていたが、ヘッドリィでのサウンドとは全く違っていた。でも僕は、そこで何をどうすべきかがわかっていたし、反響するドラムサウンドをどう利用すべきかも理解していた。そうやって録音したものをオーバーダビングしてすぐに仕上げたんだ。

ベース、ガイドヴォイス、ギターで1度通した後、バッキングギターをかぶせた。そして次はロバート・プラントのハーモニカパートだった。バックのハーモニカパートを自然なエコーのように聴かせたかった。全ては素早く進行した。ドラムがセットアップされてジョンが叩いてみたのを聴いた途端に、全てが浮かんだのさ。

ーはっきりと喚起されたのですね。

ペイジ:その通り。聴いたものをヴィジュアライズできたんだ。常にそうとは限らない。仮にそうなら、僕は特別優れた人間になっているだろう。だがこれが現実だ。

コロナ禍のロックダウン中ずっとそうしていたように、僕がギターを弾く時は、まず自分がよく知っている曲やフレーズを弾く。そして自分が意識する前に、即興で弾いている。即興もずっと弾いていると、これまでとは違った何らかの形になってくる。つまりそうやって、新しい曲が書き上がるのさ。自己流で学ぶミュージシャンの仲間入りだ。このような習慣には、良い面もあれば悪い面もあると思う。皆それぞれのやり方がある。一方で音楽教育を受けたミュージシャンは、スケールを一日中練習しなさいと言うだろう。



ージョン・ボーナムについて、彼がとても素晴らしくかけがえのないドラマーだということを、ドラムを知らない人にどのように説明したらよいでしょうか?

ペイジ:1stアルバムの最初の曲は「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」だが、これは意図せずそうなった訳ではない。なぜ1曲目かというと、とても短い曲だが、多くのアイディアが詰め込まれているからだ。最初にドカンと爆発させる感じだ。しかしリフ以外に重要なファクターのひとつは、ドラミングだ。この曲のドラムで彼は、人々のドラムに対する見方を一夜のうちに変えてしまったからね。そういうことさ。

もうひとつの特徴は、バスドラムのロールだ。彼はひとつのバスドラムをひとつのペダルで操っている。ツーバスではない。片足だけで叩いているんだ。「俺でもできるさ」と言うかもしれないが、実際にやってみると、すぐに無理だとわかるだろう。ほんの少しだけなら真似できるかもしれないが、彼はそれを何年間も続けてやってきたんだ。彼のテクニックは並外れていた。さらに彼はイマジネーションも持ち合わせていた。

それにジョン・ボーナムのドラムは音圧が凄かった。フォアハンドのスマッシュが強いだけでなく、どうチューニングすればどんな音が出るかをよく知っていた。全てのプレイに対するバランス感覚が優れていたんだと思う。彼のバスドラムは腹に響いてくる。彼のテクニックはとにかく素晴らしかった。彼はドラムをプレイすることを楽しんでいた。そしてもちろん、レッド・ツェッペリンを愛していた。バンドを愛し、家でもよくプレイしていた。だから僕らはステージの上でも即興を楽しんだよ。

Translated by Smokva Tokyo

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