裏拍と表拍が織りなす奇っ怪なリズム、ルーファス代表曲を鳥居真道が徹底考察

改めてイントロから聴いていきましょう。クラビが「ブンチャッ、ブンチャッ」というカントリーやロカビリーによく見られるリズムパターンを演奏しています。これはパラディドル奏法ではありませんが、左手と右手が同時に打鍵されることはなく、ピンポンのラリー、あるいは漫才のボケとツッコミのように低音と高音が交互に鳴らされています。

ダニー・ハサウェイの名盤『Live』収録の「The Ghetto」の終盤に、ダニーのコンダクトによって、女性客が「Talkin’ ’bout the ghetto」と唄い、それに男性客が「The ghetto」と返すコール&レスポンスのパートがあります。このようなやり取りがあらゆる曲の至るところで行われており、それらが集まってひとつの音楽を形成していると私は考えています。例えば、ドラムのキックとスネア、あるいはキックとハット、スネアとハット。他にも、ベースとギター、または今回の曲のようにクラビの低音と高音など。こうしたコール&レスポンスによって曲全体が形作られるというのが私の持論です。

リズムには裏拍と表拍というものが存在しますが、これもある種のコール&レスポンスの関係にあると私は考えています。裏拍と表拍を英語で言えば、前者がアップビート、後者がダウンビートです。つまり、裏と表、あるいはアップとダウンが、漫才でいうところのボケとツッコミのような関係になっているわけです。

人はリズムに興味をもったときに、必ずトニーティーこと七類誠一郎「黒人リズム感の秘密」を読むわけですが、そこでリズムを筋肉の緊張と弛緩で捉えるということを覚えます。これはつまり、表拍=ダウンビートでは筋肉を弛緩させ、裏拍=アップビートで緊張させ、リズムを緊張と弛緩の波として捉えるということです。私流に言い換えるのならば、緊張と弛緩のコール&レスポンスとしてリズムを捉えるといったところでしょうか。

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