「おバカでセクシーな女の子」の代名詞が変貌 Z世代が憧れる「Bimbo」とは?

ピンクのネイルとBe A Bimboブランドの服(Photo by Jacki Huntingdon/Barcroft Media/Getty Images)

米シカゴでバリスタとして働く20歳のクリッシー・チュラペッカさんは、TikTokで約66万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーだ。

彼女はTikTokで勢力を拡大中の「Bimboムーブメント」のリーダー的存在でもある。Bimboとは「おバカでセクシー」「尻軽な女の子」という意味の略語として、かつてはビル・クリントン元大統領の愛人からTV番組『Wheel of Fortune』の司会ヴァナ・ホワイトに至るまで、魅力的だが中身が空っぽに見える若い女性に対して侮蔑的に使われてきた。「気づいたらBimboがトレンドみたいになったのよ」とチェラペッカさんは語る。彼女たちの投稿がきっかけで「Bimbo」は自由でアクティブな左派の代名詞へと変わった。

【動画】金髪ツインテール+胸の谷間を強調したセクシーな衣装でBimbo美学を語る

チュラペッカさんの表現を借りれば「女の子、ゲイ、男女どちらにも属さない人々」が、こぞって己のフェミニティの表現にいそしんでいる。

20世紀初頭、知的レベルが劣った人々を表現する言葉として誕生したBimboは、ある意味ではほとんど変わっていない(男性に特化したHimboやMimboという言葉が出てくるのは1980年代になってから)。鳥がさえずるような優しい声で話し(ドラァグクイーンがアリアナ・グランデの物真似をするイメージ)、谷間ブラとポニーテール、目尻を跳ね上げたばっちりアイメイクを好む。丈の短いドレスにロングコートを着て、Juicy Coutureの上下スウェットとおそろいの金のフープイヤリングをつけ(ファッション界では2000年代初期からリバイバルヒットし、洋服リサイクルサイトDepopでも特に人気のアイテムだ)、Viktor & Rolfの香水「フラワーボム」をまとう(予算が限られている場合はVictoria’s Secretのボディスプレーで代用)。お手本となる女性像はカーディ・Bや『キューティ・バニー』でアナ・ファリスが演じた役柄、ポルノ女優から拡散動画で話題を呼んだCock Destroyers、そしてオツムの弱い金髪娘の元祖パリス・ヒルトンなどだ。

ここ数年、Bimboはミームという形で再びブームになっている。理由のひとつはBimbo化現象、つまりパッとしないごく普通の見た目の女性(または男性)を外科手術で印象的かつ華やかな人気者に変身させるという、ニッチなフェチ現象が話題を呼んでいるせいでもある。Instagramで「Bimboムーブメントの祖」を自認するデンマークのモデル兼セックスワーカー、アリシア・アミラさんをはじめとするインフルエンサーは、こうした美学に傾倒してかなりの数のフォロワー数を集めている。だがBimboはZ世代のTikTokクリエイターの間で憧れの的へと進化し、政治的アイコンとしての地位を獲得している。チュラペッカさんや彼女の仲間たちの定義によれば、Bimboは売春・LGBTQ・BLMに大賛成、ストレートの白人男性には反対の立場をとる。彼女の動画の中には、本人作のBimboバイブルに挙げられている十戒ならぬ「膣戒」があり、「避妊」「ストレートへの罵詈雑言」「男子禁制」などが列挙されている。

Translated by Akiko Kato

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