ビリー・ジョーが選出、グリーン・デイを象徴する15曲

7.「グッド・リダンス (タイム・オブ・ユア・ライフ)」
『ニムロッド』(1997年)

Dick Loek/Toronto Star/Getty Images

この曲は『ドゥーキー』の作業を行っているときに書き直した。エクアドルに引っ越すガールフレンドのために作った曲だった。バークレーであるハウスパーティーに行ったら、そこで大学生が各人にギターを手渡しながら歌っていた。「アコギを持ったポニーテールの奇天烈な男」って感じ。俺は「おいおい、俺もアコースティックな曲、作らなきゃダメじゃん」と思ったのを覚えている。だから彼女のことと二人の別れについて書いてみた。「記憶のタトゥーと試験的な壊死した皮膚」は、俺は彼女の名前のタトゥーを入れていたし、(別れたから)それを消さないとダメだった。そんな内容の歌だよ。

冷静になって、人生には人と道を分かつことがあることを受け入れようとする内容だ。これはかなり違う方向性で、俺はちょうど『ドゥーキー』のプロモーションを行うツアーの準備をしていたし、ラジオではシングル曲が流れていたし、成功への道を歩き始めていた。彼女は勉強の続きをするためにエクアドルに引っ越して、家族と住むことになったのさ。新しい人が人生に登場するのは素晴らしいことだが、彼らは入ってきたときと同じ早さで俺の人生から消えていくように思える。これがこの曲の意味だ。

これは93年に作った。というか、その年に完成したんだが、これがグリーン・デイに合う曲とは思っていなかった。『インソムニアック』のときにこの曲のデモを作ったけど、あのアルバムに合わなかったんだ。どうしたものかと考えあぐねて、『ニムロッド』のときに「とりあえず入れてみるか」となった。この曲にちょっとした弦楽四重奏を入れたんだけど、これはみんなが知っているグリーン・デイから大幅に外れていて、本当に素晴らしかった。このおかげで新しい世界が広がったんだ。「マジ、ヤバイよ、今後やれることがたくさん増えたじゃないか」ってね。

この曲はそのあとで独り歩きした。この曲を作ったときに結婚式や卒業式のことなど頭の中になかった。Instagramにメッセージを送ってくれた少女が、彼女の兄弟の一人が他界したばかりで、彼女の家族はこの曲を聞くとその経験を思い出すと言っていた。そんな曲になったと考えるだけで嬉しいね。




8.「マイノリティ」
『ウォーニング』(2000年)

Pat Johnson/Shutterstock

「タイム・オブ・ユア・ライフ」のあと、それ以前よりもアコースティックギターを弾くことに夢中になって、『ウォーニング』ではアコギの曲を増やしたいと思った。それに、その頃、質の悪いポップパンクが台頭していて、それに対抗するものを作りたかったんだ。それが次に進むべき段階だと思ったわけだ。また、アコースティック曲のパワーを最初に見せつけたキンクスやザ・フーなどをよく聴くようになっていて、アコースティックギターをドラム的に使った。「ピンボール・ウィザード」は非常にパーカッシヴだ。この曲はジョージ・ブッシュとアル・ゴアの大統領選挙の直前に作った。このとき、政治の風向きが保守に寄りつつあるのを実感したんだ。この曲で表現しているのは、お前は組織に従わないようになっている、お前は従順な人間じゃない、そして自分なりの個人主義を見つけようとしている、ってことだな。確実にこれまでよりも概念的なものに飛び込もうとしている感覚があった。

あのアルバムはもう一度レコーディングしたい。あのときはProToolsが登場したばかりだったから、あれが正しかったけど、今はもっとライブ感のある仕上がりにしたいと思う。というのも、ライブでの「マイノリティ」はアルバム収録時の音よりも格別に良いから。とは言え、こういうのってついつい後から考え過ぎちゃうきらいがあるんだよ。





9.「ジーザス・オブ・サバービア」
『アメリカン・イディオット』(2004年)

Frank Mullen/WireImage

俺はザ・フーの「A Quick One」が大好きだったので、ミニオペラ風の曲を書いてみようと思った。実験も含めて何でもできるスタジオがあったし、マイクとトレと俺の3人で30秒ほどの短い場面を複数作っていたから、スタジオでそれらをつなげてみることにした。

「アメリカン・イディオット」を作ったあとの俺は「このキャラクターって誰だ?」と考えていた。そして、一つのアイデアがものすごい勢いで湧いてきたんだ。それが「俺は憤怒と愛の息子/サバービアのイエス/上のどれにも当てはまらない聖書」。未知の領域に足を踏み入れた感覚だった。それも生まれた初めて。自分の曲作りのレベルが上ったのさ。ドゥーワップみたいなものから始まって、最終的にブラック・サバス的な方向性で落ち着いたって感じだ。8分間で世界一周とか、そんな感じ。そして、サバービアのイエスというキャラクターは結局アルバム全体を貫くものとなった。


Translated by Miki Nakayama

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