ビリー・ジョーが選出、グリーン・デイを象徴する15曲

10.「ホリデイ」
『アメリカン・イディオット』(2004年)

James Mccauley/Shutterstock

この頃、アメリカは偽りの理由をもとに戦争へと駒を進めていた。この裏では政治と石油が大きく関係していたんだ。国がバラバラになり始めていると感じたよ。今の俺たちの状況を生み出した主犯がジョージ・W・ブッシュだと俺は思っている。そんなんだから、この曲は自分の本当の意見、本当の個性を見つけ出して、テレビで見ること、政治、学校、家族、宗教など、すべてを疑ってかかれという内容だ。

俺は少しだけキャラクターになってみた。相当イカれたキャラクターになりたかったんだ。確実にリスナーを刺激するものを作りたかった。そこで俺は「ガスマン大統領、勝利万歳」という感じで、ナチスが作った古いドイツのプロパガンダ映画を思い出して、それをアメリカの政府部局と対比してみた。歌詞は相反する単語や言い回しを使った。リフはコードを違う方法で弾いてみたり、エコーやディレをかけたりして、普段のやり方でリフを作っていった。




11.「21ガンズ」
『21世紀のブレイクダウン』(2009年)

Jason Decrow/AP/Shutterstock

自分の限界を超えて音楽も歌詞も新たなレベルに到達しようとがんばりすぎて、俺はかなり消耗していた。そのせいで相当シリアスでダークになってしまった。俺には降参したいという気持ちがあった。魂が拷問されている生活のようだったのさ。そうなると、人は周囲の人々もいじめるようになるんだ。家族や友達をね。そして誰も自分の心の内側で起きていることを理解してくれなくなる。もしかしたら、それがアーティストとしての生き方かもしれないし、年を取ることの痛みなのかもしれない。

この曲はそんなことを歌っている。つまり、自分のやっていることがわからなくなって途方に暮れてしまい、ある時点で後戻りすることばかり考えている自分に気付く。たぶんまともな精神状態だった頃に戻りたいのだろう。ときには戦うことの価値を見極めないといけない。だって独り相撲している可能性だってあるから。たぶん、これが俺の曲でよくテーマになっていることだと思う。この「途方に暮れる」という感覚ね。




12.「フェル・フォー・ユー」
『ウノ!』(2012年)

Kevin Estrada/Invision/AP/Shutterstock

『ウノ!』『ドス!』『トレ!』の3枚をグリーン・デイのパワーポップ版『メイン・ストリートのならず者』にしたいと常々願っていた。音が十分にこなれていなくて、プロダクションも最高じゃないと知っている。あのアルバムに収録された楽曲が大好きなのだが、まだ生焼けな感じがしてならない。あの頃は奇妙な時期だった。密かに情緒不安定になっていた。まあ、密かにって言うほどでもなかったが。原因は極度の疲労だったと思う。あのアルバムに収録された曲は36あったんだ。正気の沙汰じゃない。でも、あとで聞き直すと「フェル・フォー・ユー」が突出して聞こえるんだ。あの頃、俺はパワーポップをたくさん聞いていた。パワーポップというのは、チープ・トリックにしろ、(他のバンド)にしろ、世界で一番の音楽なのにみんなに嫌われる。まるで「俺たちを生き続けさせてくれる夢とか、愛とか、恋心とかについての軟弱なバブルガムソングを作ろうぜ」って状態だったんだ。

そういう夢とか、愛とか、恋心とかは大人になっても消えない。いつだって一緒に過ごしたいと思う人と出会うけど、それを現実的に考えなきゃいけなくなる。子どもの頃は直感に従っても問題ないけど、大人になると自分の手で壊してしまうことがたくさん起きる。だから、実行に移すよりも曲を作る方が利口なやり方かも知れない。


Translated by Miki Nakayama

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