制作費1億円規模のデュア・リパのオンラインライブにみる、ライブストリーミングの未来

オンラインライブがもたらした数多の視聴者とチケットセールスは、音楽業界の新しい解釈の正当性を立証している。アーティストや音楽会社がもうかるバーチャルイベントを開催したいのであれば、そのイベントは唯一無二のものでなければならないし、それには莫大なキャッシュが必要かもしれない。例えば、KISSの制作費と比べると、150万ドル超えのリパのライブさえかすんでしまう。というのも、バンドが2020年の大晦日にインド・ドバイでの開催を企画している超豪華オンラインライブの制作費は、8桁(約10億円)になるとさえ言われているのだから。

とはいっても、ライブストリーミングは依然としてコケるか当たるかわからないし、優れたマーケティングとコストをかけることへの意欲なしには、上手くいかないかもしれないとブッキングエージェントは頑なに主張し続けてきた。新型コロナウイルスによるロックダウン初期には、低予算の気軽なライブストリーミングがあふれたものの、この市場はいまや飽和状態で、遅れながらもこのトレンドに身を投じようとするメジャーアーティストは、自ら予算を持ち込まなければならない。

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ラナ・デル・レイ、エリー・ゴールディング、ヘイリー・スタインフェルドなどのアーティストを抱えるTaP Musicは、リパのオンラインライブ以前からライブストリーミングを行ってきた。同社は、ロンドン自然博物館で開催されたシンガーソングライターのダーモット・ケネディのライブのみならず、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)でのゴールディングのライブも企画したのだ。

「私たちは、(オンラインライブが)本当に最高の体験をもたらしてくれるのだろうか? と深い不信感を抱いているファンを満足させるアプローチを取っています」とオン社長は言う。「プロダクションのバリュー、ゲスト、場所など、付加価値を与えてくれるものが何であれ、こうしたものに徹底してコストをかけなければ、ファンは納得してチケットを購入し、視聴してくれません。それができなければ、普通のミュージックビデオを自宅で鑑賞するのと変わりないのです」。

From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori

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