エルヴィス・コステロが語る、キャリア屈指の最新作と「過去に縛られない」自身の歩み

エルヴィス・コステロ(Photo by Ray Di Pietro)


コステロが思い描く将来の展望

―先程、セッションへの今回のアプローチ方法について伺いましたが、将来的にも今回と同様のやり方を採用しようと思いますか? あるいは、再びマジックを起こそうとするでしょうか?

コステロ:実はB面用に、もう1曲用意してある。シングル「ウィ・アー・オール・カワーズ・ナウ」のB面だ。僕にとってはアナログ盤が理想なんだけどね。「フォノグラフィック・メモリー」という曲で、既にリリースされているが、アルバムには収録されていない。同時にレコーディングした単独の曲で、アコースティックギターをバックに語っている。未来の大統領就任式をテーマにした奇妙な話で、内戦後にインターネットが遮断され、全ての本が焼かれるか大学に封じ込められている。就任スピーチができる品格のある人が見つからないので、議会図書館へエンジニアを派遣し、シリアスな語り口調のオーソン・ウェルズの録音から言葉を切り貼りしてスピーチを作らせる話だ。彼の声はまるで案内放送のようだった。

スピーチの原稿を書いたものの、威厳をもって話せる人間がいなかった。そこで録音された音声を機械的につなぎ合わせて、新大統領の就任スピーチをでっち上げる。この曲を歌っているのは、スウィフトという名の若き女性大統領で、これが誰かは想像にお任せする。今自分たちが生きている世界を想像できる。僕にはすぐにこのアイディアが浮かんだから、書き残しておかなくては、と思ったのさ。荒唐無稽なストーリーを作るのは愉快だった。



―5年前だったらクレイジーな話だと思ったでしょう。でも今なら、将来ありがちな話のように思えます。

コステロ:5年間、ミュージカルに取り組んできた。来月公開予定だったが、この様子では来年になるだろう。振付師や衣装デザイナー、楽譜に台本と、準備は進めている。バッド・シュールバーグ原作の『群衆の中の一つの顔』をベースにした作品で、楽曲は20曲使用する。

何年もコンサートで歌ってきた曲で、ファンにも受けが良い。レコーディングするとは誰にも言っていないが、次にはこれらの曲をレコーディングすると思っている人もいるだろう。でもミュージカルが延期されたので、いつか僕のバージョンをレコーディングすることになるかもしれない。でも今すぐではない。ミュージカルがいつになるかわからないからね。今年もずっと仕事を続けてきた。このアルバムが完成した後も、ただ働き続けている。

来年リリースを予定しているアルバムを既に何枚か用意している。生きている証を示す方法を考えねばならないからね。今の状況にただ屈するのでなく、ひたすら前へ進み続けなければいけない。他に選択肢はあるか? さもなければ、ただ状況に苦しめられるだけだ。劇場へ安心して出掛けられるようになるまでには、しばらく掛かる。オーストラリアはどんな状況だい?

―完全には再開していません。ソーシャルディスタンスを保ったイベントは始まっていますが、感染が再度拡大しているため、いくつかはキャンセルされました。

コステロ:ドライブインでのイベントに車で出掛けて、拍手の代わりにヘッドライトを点滅させるようなのもあった。少々異様な風景だ。僕に合うかどうかはわからない。スティーヴ・ナイーヴが数週間前にある映画祭で演奏した。エンニオ・モリコーネの追悼で、ピアノの即興曲を弾いた。客席はひとつおきだったと思う。まるでチケットの売れなかった劇場で演奏するようで、奇妙な感じだ。でも今はそれが精一杯なのだろう。ステージから見たら異様な景色だろうな。客席からもそうだろう。かつての状況とはまるで違う。

音楽が流れ続ければ、しかも予期せぬ形で登場すれば、噂を聞きつけてその曲を探そうとするだろう。素晴らしいことだ。疑いを持つ人もいるが、ストリーミングがその良い例だ。耳障りな会話を排除したラジオのようなものだと思う。いつでもスイッチをオンにして、何らかの発見がある。僕はレコードも好きだ。僕が言うのはアナログ盤のことだよ。知っての通り、最近ではまたアナログ盤が流行っている。

『アームド・フォーセス』の9枚組セットが再々リリースされる。このアルバムの決定版となるだろう。誰もが求める訳ではないだろうが、欲しいと思う人もいるはずだ。ライヴ盤とオリジナルのリマスター盤の他に、オリジナルの手書きのノートをたくさん収録したコミックブックも付いている。このアルバムがどのように出来上がったを知りたい人もいるだろう。オーストラリアで収録した『Riot at The Regent』の音源も含まれる。悪名高いコンサートの記念だ。家族みんなで楽しめるってやつさ。

―この暗い時期においても、あなた自身から音楽という形の光が発せられています。

コステロ:今は誰もがレコードを買うのかどうかわからないが、欲しければそこにある。公共サービスの一環として音楽を作り続ければ良いと僕は思う。僕はここにいるぞという証を皆に示しておかないとね。

―インタビューのお時間を頂き、ありがとうございました。そしてニューアルバムのリリースも、改めておめでとうございます。

コステロ:話せて楽しかったよ。元気でね。オーストラリアへ行ったのは数年前だったかな。また行きたいが、あらゆる計画が全て延期になってしまった。いつになるかはわからないが、必ず行くよ。楽しみだ。

「元気で過ごして、テレビは窓から放り投げてしまえ」というのが、僕から皆への最高のアドバイスだ。テレビなど見てはいけない。何の役にも立たないからね。

From Rolling Stone au.




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Translation by Smokva Tokyo

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