音楽業界の未来、実はストリーミングではなくSNSが重要

先見の明がある投資家たちの資金が集まるオンラインでのカラオケや音楽制作が、音楽業界にとってますます重要なビジネスへと成長している(Photo by Griffin Lotz)


11月のテレビ会議でクーパー氏が語ったように、「クリエイターがオーディエンスに、オーディエンスがクリエイターになり、巨大な乗数効果を生み出す」時代を迎えようとしていることは明白だ。

一部の予測によれば、全世界のゲーム市場は2025年までに年間3000億ドル(約31兆円)を超える金額を生み出す見通しだ。音楽事業を一括りにした市場が現時点で生み出しているのは、この数のおよそ6パーセントである。

金儲けのチャンスは、SNSプラットフォームに限られたものではない。クーパー氏は、WMGが「『ゲーム、フィットネス、ライブストリーミング』など、初期ステージにある収入源にもますますフォーカスするようになっている」とも指摘した。

これらは、音楽業界にとっては無秩序に広がる多面的なチャンスである。そのポテンシャルを強調するためにも、ここで筆者にいくつかの統計データを深掘りさせていただきたい。ライブストリーミングの成長は、本誌やその他のメディアによって十分報じられてきた。先日デュア・リパが開催した有料オンラインライブStudio 2054は、ライブ開催前から28万4000枚のチケットを販売した。チケットの価格は、11.99ドル(米国での早割)から最高で100ドル(英国のアメリカン・エキスプレスの“Levitating Lounge Package”メンバー限定)で、後者には、サイン入りのアルバム、トレーナー、バックステージコンテンツへのアクセスと至れり尽くせりの特典が付いた。その結果、リパの1回限りのライブは200万ドル(約2億800万円)から2000万ドル(約20億7600万円)の総収入をもたらした。

>>関連記事:「フォートナイト」とエピック・ゲームズから音楽業界が学ぶべきこと

当然ながら、パンデミックのロックダウンによってフィットネス業界も爆発的に伸びている。高級感あふれる自宅用エクササイズバイクのサブスク型プラットフォームを運営する米ペロトンは、7〜9月末までの四半期の売上高が7億5800万ドル(約786億円)だったことを発表した。これは、対前年比232パーセント上昇という驚異的な数値だ。ペロトンは、先月投資家に送った文書のなかで、第3四半期に1億5650万ドル(約162億円)を達成した同社のサブスクによる売上は、継続的に「楽曲の著作権使用料(ロイヤリティ)をはじめとする変動費」の対象となると述べた。

それに加えてWMGとユニバーサルミュージック・グループ(以下、UMG)は先日、VRフィットネスゲーム「Supernatural」とのライセンス契約を締結したばかりだ。「Supernatural」とは、Facebookの子会社が開発したVRハードウェア「Oculus」を通じて「世界でもっとも美しい場所を全方向から捉えた映像」の中でフィットネスが楽しめるゲームだ。同ゲームのBGMには、リゾをはじめとする人気アーティストの楽曲が含まれているため、WMGとUMGには、同ゲームが掲げる毎月19ドルのサブスクから収入が入ることになる。たかがニッチ製品じゃないか、とあなどってはいけない。全世界のフィットネスサブスク市場は、はやくも230億ドル(約2兆3900億円)を超えているのだ。

ビデオゲームも忘れてはいけない。ビデオゲームは、もっぱら話題になったトラヴィス・スコットとフォートナイトのライブのみならず、1億5000万人を超える月間アクティブユーザーを抱えるオンラインゲーム「ROBLOX」でのリル・ナズ・Xの話題のオンラインライブ(330万人が視聴)などを通じて今年のイノベーションを加速させた。一部の予測によれば、全世界のゲーム市場は2025年までに年間3000億ドル(約31兆円)を超える金額を生み出す見通しだ。音楽事業を一括りにした市場が現時点で生み出しているのは、この数のおよそ6パーセントである。著作権使用料やアーティストとのパートナーシップという形でゲーム業界の収入の一部にありつけるだけでも、大金が棚ぼた式にWMGのような会社に転がり込むはずだ。

11月の電話会議でクーパー氏がこうしたことを念頭に置いていたことは間違いない。「コロナ禍においても希望が持てる何かがあったとしたら、それは私たちの長期的視点を再修正し、変化のペースを加速させ、私たちの地位を確立し、かつてないほど力強くパンデミックから立ち上がるチャンスが与えられたことです」。


著者のティム・インガムは、Music Business Worldwideの創業者兼発行人。2015年の創業以来、世界の音楽業界の最新ニュース、データ分析、雇用情報などを提供している。ローリングストーン誌に毎週コラムを連載中。

From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori

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