ボブ・ディラン、史上屈指の取引額で全楽曲をユニバーサルに売却

今後、ディランの楽曲が映画、テレビ番組やCMなどに起用されることが多くなるかもしれない。

過去にディランがこうした方法で自身の楽曲を大喜びで利用してきたことからもわかるように——Apple、ヴィクトリアズ・シークレット、キャデラック、ペプシなどの広告とのタイアップは記憶に新しい——今回の契約によってディランの音楽コンテンツがこうした場面で使用される頻度が大きく変化することはありそうにない。だが、まだまだ続きがあるかもしれないのだ。もしあなたが、ディランの「Sad-Eyed Lady of the Lowlands」がフィットネス事業を展開する米ペロトンの来年の広告用BGMにどうして起用されたのか? と頭をひねっていたなら、その理由がわかったはずだ。

レコーディングによるディランのアウトプット量は変わらない。

今回の契約は、レコーディングにおけるディランの原盤権までは対象としていない。レコーディングにおける原盤権とは、パフォーマーとしてディランが発表したすべてのアルバムおよび楽曲にまつわる権利と著作権使用料のことだ。そのため、EDMリミックス版『ブロンド・オン・ブロンド』や『フリーホイーリン2』的な作品が今後リリースされる頻度は変わらないだろう。それに加え、いまもディランが取り組んでいる未発表音源集『ブートレッグ・シリーズ』の今後のリリースにも影響はない。というのも、同シリーズは今後もディランと彼のマネジメントおよびレコード会社の支配下に置かれるからだ。

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今後は、より多くのメジャーアーティストが楽曲を売却することになる。

こうした発想は、何もディランに限ったことではない。2020年、数多くのメジャーアーティストが自作楽曲を投資家や音楽会社に莫大な金額で売却してきた。フリートウッド・マックのボーカリストのスティーヴィー・ニックスも自作楽曲を売却したし、ジャック・アントノフ、トム・デロング、リッチー・サンボラ、イマジン・ドラゴンズをはじめ十数組のアーティストもそうしてきた。それは、ストリーミング全盛期のいま、こうしたアーティストのバックカタログには、それらの著作権を持つ人に将来大金をもたらすポテンシャルがあるからだ。だからこそ、アーティストやソングライターはいま、収入源である楽曲を新たな所有者に譲る代わり、大金を手にしている。楽曲の新たな所有者は、今後のありとあらゆる金儲けのチャンスやストリーミングによる懐メロのリバイバルなどから利益が得られる。懐が暖かい投資家たちは、新しい取引に現在も飢えているため、楽曲売却熱がすぐに冷めることはない。ディランだけでなく、今後も他のアーティストたちが自作楽曲と引き換えに大金を手に入れることは間違いない。それに、いまは新作をリリースすることもなければ、ツアーも行わないものの、9桁のオファーを提示されて過去の楽曲を差し出さないレジェンド的なアーティストは、いまも数え切れないほどいるのだ。

From Rolling Stone US.



Translated by Shoko Natori

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