スマパンのビリー・コーガンが語る不変の音楽愛、父になって訪れた変化、日本への想い

父親になったことによる変化

−最近のあなたを見ていると、スマッシング・パンプキンズ再結成以降も続けてきた苦闘からようやく解放され、とても落ち着いた穏やかな心境にある様子に見えるのですが。

ビリー:(笑)

−間違っているかもしれませんが、そう思えたんです。

ビリー:いやいや、君は間違っていないよ。怒りっぽい人間が丸くなった、みたいな感じかな。

−やはり父親になったことが大きいのでしょうか?

ビリー:う~ん……いいや。子供達のことはよく考えるよ。そしてそれが僕の幸せに大きく関わっているとは思う。けど、単にこれは僕が歩んで来た旅なんだ。生き延びて、これだけ長い間成功してきたことが肝心なんだと思ってるのかもしれない。だから僕は、音楽を世に送り出すことに幸せを感じているし、それについて話すことを誇りに思っている。誰に対して怒るでもない。僕には何の意図もない。単にミュージシャンであって、しかも自分の分野で成功していることが嬉しいんだ。このインタビューが終わったら、クレイジーなアルバム『マシーナ』に取り組まないといけない。忙しいけど、それはラッキーなことなんだ。だからこういうことが言えるんだよ。

−お子さんは5歳と2歳ですよね。

ビリー:そう。おかしい話があるんだ。この間、息子を車に乗せて運転していた時、僕は息子に「おまえが生まれた日は、お父さんにとって最も大切な日だったんだよ」って言ったんだ。でも息子には「そうだね、これからオモチャ屋さんに行くの?」って言われたよ(笑)。そこが素晴らしいんだ。息子が僕にとっていかに大切な存在なのか、僕にはわかっているけど、息子は小さいからまだ理解出来ない。それが素晴らしい。僕たちの年齢差はかなりのものだからね。48歳差かな。だから、僕たちには半世紀の隔たりがあるわけで、それで年とった父親と幼い息子という、とてもユニークな体験が出来るわけ。というわけで、君に言えるのは、全てが意味を成したということ。「なぜこんなに必死に仕事をし続けているんだろう?」と思った時、その意味を理解するための骨組みを子供達が与えてくれる。家族の一員としても、アーティストの僕としても、これまでになかった視点でとらえられるようになったんだ。

1人だった頃は、「充分にできなくてもかまわない」と思っていた。簡単に忘れ去られるかもしれないと思ったりもした。ロックンロールの歴史から僕を抹殺しようとした人達がいたことを、僕は間違いなく見てきた。そうすると、全て何の価値もないんじゃないかって思うようになる。「青春時代を犠牲にして、夢を追いかけてきたことの意味は何だったんだろう?」とね。でも子供を持ったことによって、今では自分の労力や音楽に対する努力をより健全かつハッピーな視点でとらえられるようになったんだ。要するに、僕は音楽に見返りを求めないってこと。音楽は単に僕がやっていることであって、あとは家に帰るだけ。わかるかな?

Translated by Mariko Kawahara

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