スマパンのビリー・コーガンが語る不変の音楽愛、父になって訪れた変化、日本への想い

トレンドに流されない音楽愛

−ところで、「好きな曲は聴きすぎて燃え尽きてしまって、以前ほど聴けなくなってしまった。今は無名のものばかり聴いていて、何か波を捕まえたいと思っている」と語っていましたが、その後、何か具体的にキャッチできたものはありますか?

ビリー:もちろん! 最近、レコードをたくさん買ったんだ。Spotifyとかでは聞けないようなものを売っている店でね。YouTubeにすらアップされていない、無名のものもある。1つは、僕が発掘してから数年前に再発されていたことを知ったんだけど、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのディノ・ヴァレンテ。彼は、1971年頃にEpicでソロ・アルバムを1枚作ったんだ(編注:実際は1968年)。当時はものすごくクレイジーでアーティスティックなアルバムがメジャー・レーベルで作られていた。メジャー・レーベルは、ヒッピーがどういうものかわかっていなかったんで、その手のアーティストと契約して、すごく変てこなLSDタイプのアルバムを作っていたんだ。



ビリー:それから最近は、60年代にファミリーで作ったゴスペル・レコードを見つけたよ。このファミリーについては何の情報も得られなかったけど、そのゴスペル・レコードはとっても良かった。カーター・ファミリーみたいな感じなんだ。カーター・ファミリーはカントリーのパイオニアで、1920年代か1930年代に始めたんだよ。ジョニー・キャッシュは、カーター・ファミリーのオリジナル・メンバーの娘のジューン・カーター・キャッシュと結婚したんだ。彼らはおそらく、カントリーの世界ではナンバーワンのファミリーだね。だから、60年代にあの手のカントリー/ゴスペルのフィーリングを持ったファミリーを想像してごらん。ネットで調べても、このグループのことは全くわからなかったんだけど、彼らの出身地のとあるファンがそのファミリーの出所を突きとめてくれたんだ。あれはとても嬉しかったな。そのレコードを作った、まだ健在のファミリーの人達とも話をすることが出来たんだ。

というわけで、こういった超無名のものさ。ググることさえ不可能なほど無名なもの。網の目をすり抜けた音楽を聞くのは興味深い。たまにサプライズがあるからで、こんな時代にこんなものが作れたんだって思うもの。音楽ビジネスは、ヒット曲が出ようが出まいが進んでいく。だから、メインストリームの時代精神にあまり影響されていない音楽を見つけられると嬉しいんだ。

−あと、『CYR』に関して、スージー・アンド・ザ・バンシーズ、シスターズ・オブ・マーシー、ジョイ・ディヴィジョンといったバンドの名前を挙げていましたが、この3つのバンドの特に好きなアルバムや曲はどれか教えてもらってもいいですか?

ビリー:もちろん。タイトルが間違っているかもしれないけど、シスターズ・オブ・マーシーは『First and Last (and) Always』が超オススメだね。これは素晴らしいアルバムだよ。僕が持っているアルバムで最高の出来じゃないかな。



ビリー:スージー・アンド・ザ・バンシーズは、確か『Dazzle』っていうアルバムを作ったと思うけど(訳注:アルバム『Hyaena』の1曲目に収録された曲)。オーケストラと共演した作品で、1984年頃だったかな。あれは本当に素晴らしい。大好きだ。あともう1つは何だっけ?

−ジョイ・ディヴィジョンです。

ビリー:僕は、ジョイ・ディヴィジョンがやったことは全て素晴らしいと思っている。『Unknown Pleasures』は、みんなが一番よく話題にするアルバムだよね。彼らが作ったアルバム中、最も画期的だからだ。あのアルバムも間違いないね。

Translated by Mariko Kawahara

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