LiSAが魅せた今年最初で最後のライブ、心燃やした希望の曲たち

「エレクトリリカル」を披露した理由

3曲終えたところでデニムジャケットからカラフルなファージャケットへと着替えたLiSAは、「1年ぶりじゃない、ライブするの? この日を待ってました!」とモニターの向こうにいる“キミ”に語りかける。そして、いつものライブのように「愛と思いやりを大切に、ここにいるみーんなで、最高に楽しんでいきましょう。ピース!」と告げると、ダンサーを交えて「エレクトリリカル」をパフォーマンス。モニターの前にいるオーディエンスと一緒にダンスする様子が目に浮かぶこの曲で、「ああ、久しぶりにLiSAのライブを体験できている」と再確認できたファンも多いことだろう。一方で、バーチャルをテーマにしたこの曲を久しぶりにセットリストに組み込むあたりに、LiSAのこのライブに対する姿勢も感じ取れたのではないだろうか。


Photo by 上飯坂一

ここまで親密な距離感でライブが進行してきたが、続く「愛錠」では空気感が一変。暗めの照明のもと、囁くような繊細さと叫びにも似たエモーショナルさの緩急に富んだ歌唱で、観る者を魅了した。そして、ファージャケットを脱ぎ捨て白いワンピース姿に着替えたLiSAは四方八方をLEDスクリーンの壁面で囲まれたステージに移動し、「わがままケット・シー」を披露。CGが映された床に寝そべって歌うその姿からは、大人の魅力が伝わる。オンラインライブならではの演出と新境地を伝える曲調とが相まって、LiSAの新たな可能性を見事に伝えることに成功したのではないだろうか。


Photo by 上飯坂一

さらに、「unlasting」ではダンサー2名を加え、LiSAは広大な宇宙を感じさせる密室の中で感情の高ぶりをそのまま歌に乗せる。そこにダンサーたちのコンテポラリーダンスが合わさることで、歌の主人公が抱えた心の痛みがダイレクトに伝わってきた。「unlasting」を表現する上で完璧な演出だった気がする。

濃密な3曲を経て、再び歩き始めたLiSAの動きに合わせ、LED壁面が取り除かれると、目の前にはバンドメンバーの姿が。モニター側から逆光となる形で、LiSAとバンドメンバーはヘヴィな「cancellation」をプレイ。視聴者側に背を向け、逆光でシルエットしかわからない映像ながらも、楽曲が持つハードな世界観と見事にマッチし、その計算された映像美にドキリとさせられる。最新アルバム『LEO-NiNE』収録曲を最高/最良の形で届けるための演出の数々は、LiSAが当初「ライブで見せたい」と思い描いていた形とは異なるのかもしれない。しかし、ピンチをチャンスに変えた結果、こうした意欲的な試みを目撃することができたという点においては、我々はラッキーだったのかもしれない。

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