ポール・マッカートニー×テイラー・スウィフト対談「誰かをそっと支えるような曲を書きたい」

「自分の力でなんとかしよう」という姿勢

ポール:多くの人が君と同じように感じていたと思う。親しい人に「こんなことを言うべきじゃないのかもしれないけど、実はこの隔離生活を楽しんでるんだ」って言ったら、「言いたいことはわかるけど、他の人に言っちゃダメだよ」って釘を刺された。大勢の人々が苦しんでいるんだからね。

テイラー:人生には他人任せにしている部分がすごく多いと思うんです。自分でコントロールするのを完全に放棄している部分が。(隔離生活で)それが浮き彫りになると同時に、日頃アウトソーシングしていることの多くは自分でできるんだってこともはっきりしたと思う。

ポール:素晴らしいね。僕がシンプルな暮らしを大切にしている理由も、本質的には同じだ。何かに不具合が起きた時、多くの人は修理を誰かに任せようとするけれど、自分でなんとかしてみようっていう姿勢が大切なんだ。

テイラー:金槌と釘を持ち出して。

ポール:画を壁に飾るとか、その気になれば誰にでもできることだ。ビートルズが解散した後、僕たちはスコットランドにある本当に小さな牧場で暮らしていた。その時のことを今振り返ると、ほんの少しだけ恥ずかしく思うんだ。「誰か掃除をしてくれる人はいないのか?」なんて思っていたからね。

でも、あそこでの暮らしを経験して本当によかったと思ってる。ビートルズでアップル・レコードを立ち上げた頃、僕はクリスマスツリーなんかも誰かに買いに行かせてた。でも、しばらくしてこう思ったんだ。「クリスマスツリーは自分で買いに行く。それが当たり前だから」って。店に行って、店員さんに「それをください」って伝えて、自分で持って帰ってくる。些細だけど、とても大切なことだと思うんだ。

スコットランドで暮らしてた時にテーブルが必要になってカタログを見てたんだけど、ふとこう思ったんだ。「自分で作ってみよう。木工は学校で学んだし、蟻継ぎの要領だって分かってる」ってね。それで実際にやってみた。キッチンで材木を削り、蟻継ぎの接合部を作った。釘は必要なくて、接着剤を使うんだ。うまく接合するかどうか、すごく不安だった。「たとえこれがうまくいかなくても、いつか必ず成功させる。だから後戻りはしない」そんな風に自分に言い聞かせた。結果的に、すごくいい感じのテーブルに仕上がったんだ。素晴らしい達成感だったよ。

最近ステラと一緒にスコットランドに行ったんだけど、「あれ見つかった?」って訊くと彼女はノーって言った。一応自分でも探してみることにしたんだけど、誰も覚えてない様子だった。ある人に「物置のひとつの隅に木がたくさん転がってたから、その中に混じってるかも。薪として使っちゃったかもしれないけど」って言われたんだけど、薪になるような木じゃなかったんだ。みんなで探して、見つけた時はものすごく嬉しかったね。「僕のテーブルだ!」なんて声をあげてしまうくらい。他の人には退屈なエピソードかもしれないけどさ。

テイラー:そんなことないですよ! すっごくクール!

ポール:自分のことは自分でやるっていうことが、当時の僕にはすごく重要なことに思えたんだ。君はさっき裁縫の話をしてたけど、君のような立場にある人の多くは、そういうのを誰かにやらせようとするはずだから。

テイラー:実は今、周りでちょっとしたベイビーブームが起きてて。つい最近、友人の何人かが妊娠したんです。

ポール:君くらいの年齢なら、不思議ではないよね。

テイラー:生まれてくる彼女たちの子供のために、何かを手作りしたいって思って。それでモモンガのぬいぐるみを自作して、友達の1人に贈ったんです。別の友達にはテディベアのぬいぐるみを送って、少し前にはシルクに刺繍をした赤ちゃん用のブランケットを作り始めました。すごく凝ったやつ。あと、最近は絵もたくさん描いていて。

ポール:どんな絵を描くの? 水彩画?

テイラー:アクリルか油彩です。モチーフが花の時は水彩絵具を使って、景色を描くときは油彩絵具を使います。丘の上にポツンと立ってる、小さなコテージを繰り返し描いていて。

ポール:ロマンチックな夢みたいだね。

Translated by Masaaki Yoshida

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