マイリー・サイラス激白「生死を分ける27歳」で気づいた本当の自分

自分の声こそがわたしのアイデンティティ

筆者と会った時、彼女は28歳の誕生日を数週間後に控えていたが、セレブとしてのキャリアの長さを考えると、彼女がまだその若さであるという事実に改めて驚かされる。ディズニー・チャンネルのTVドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』(2006年〜2011年)で何百万というキッズのハートを射止めた彼女は、それ以降ドラッグについて歌ったり、半裸姿で巨大な金属球の上で歌ったり、フレーミング・リップスのウェイン・コインとサイケデリック・ポップの一大叙事詩を作り上げたりと、アメリカンスウィートハートのイメージを徹底的に拭い去ろうとしてきた。





ロックが最もワイルドだった時代のひとつへのトリビュートという『プラスティック・ハーツ』のコンセプトとは対照的に、現在の彼女はかつてなく冷静で落ち着いている。「ついこないだ、ある人から『君は何にも縛られない自由な鳥のイメージだ』って言われたの」。彼女はそう話す。「わたしはそんな風に思ってない。しっかりと地に足がついてるって感じてる。自由だけど、ちゃんと責任を負ってるから。今のわたしは心と体の両方の健康を、以前よりもずっと強く意識してる」

現在でこそそういった状況だが、彼女の過去2年は波乱に満ちていた。2018年末、彼女と当時のフィアンセだったリアム・ヘムズワースが暮らしていたマリブの家が、ウールジー火災によって全焼した。6年前から婚約していた2人はその1カ月後に結婚したが、わずか8カ月後には離婚を申請している。サイラスはその後、『ザ・ヒルズ』への出演で知られるケイトリン・カーターや、旧友のコーディー・シンプソンとの交際でタブロイド紙を賑わせた。

そして2019年11月、彼女は全く異なる事態で世間の目に晒されることとなる。声帯の酷使を原因とするラインケ浮腫の治療のため、彼女は緊急手術を受けなくてはならなかった。手術は成功したが、27歳でこの世を去った有名人たちの仲間入りをするかもしれないという恐怖感は、彼女に酒とドラッグを断つことを決意させた。

「自分の声こそがわたしのアイデンティティ。他の人にとってもそうだと思ってる」。スタジオにあるU型のソファの上に横たわった彼女は、「ヴァイブスを上げるため」だというノンアルコールのハイネケンを飲みながらそう話す。その長いキャリアにおいて、サイラスは自分の存在意義である歌声と言葉がようやく真摯に受け止められるようになったと感じている。名声を放棄することなく誠実さに満ちたレコードを生み出したジョーン・ジェットやドリー・パートン、そしてデビー・ハリー等を、サイラスは『プラスティック・ハーツ』のインスピレーションとして挙げる。「わたしをインスパイアしてくれるものや、カオスの権化のようなわたしを形作るものを、ファンや同世代の人々に全部知ってもらいたいの」

Translated by Masaaki Yoshida

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