THE ORAL CIGARETTES鈴木重伸が語る、バンドのリーダーとしての軌跡

Rolling Stone Japan vol.10掲載/Coffee & Cigarettes 19| 鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。繊細なギターフレーズとストイックなプレイスタイルでTHE ORAL CIGARETTESの音楽にフックを与え続けるギタリスト・鈴木重伸。タバコによってもたらされた「人と人が語り合う時間」。そして、アリーナツアーを開催するまでに成長したバンドのリーダーとして、ひとりの人間として成長してきた軌跡を追った

Coffee & Cigarettes 19 | 鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)


※本記事は、Rolling Stone Japan vol.10(2020年3月25日発売号)に掲載された記事です。

すらりと細長い指でタバコに火を点ける。その指の美しさがそのまま、彼の生み出すギターフレーズの繊細さに重なる。THE ORAL CIGARETTESのギタリスト・鈴木重伸。豪胆なライブパフォーマンスの印象が強いTHE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)だが、その実、彼らの楽曲の強烈なフックになっている歌心に満ちたギタープレイには、職人的な鍛錬とバンドの屋台骨としての自覚が感じられる。このストイックなスタイルを生み出した原点とはなんなのだろうか。

「ギターに本格的に触り始めたのは、高校の軽音楽部の頃。母親のアコギが昔から家にあって弾いたことがあったから、ギターをやってみただけで。最初は本当になんとなくでした。当時は音楽を深く掘るわけでも、ライブに通うわけでもなかった。オーラルを通して音楽にのめり込んできたし、自分の人間性すらオーラルに変えてもらったと思っているんです。昔の僕はずっと自分を卑下しているところがあったんですよ」

オーラルのリーダーでもある鈴木から、意外な言葉が漏れる。その人間性すら変えてくれたと語るメンバーとの出会いは彼自身にとっても驚きと困惑が入り混じるものだったという。

「ヴォーカルの(山中)拓也と幼馴染で、しかも同じマンションに住んでたんですよ。ただ、すごく親しいわけでもなかったし、属しているグループも違って。拓也はファッションにしても音楽にしても、僕らより数年先を行っている存在で、どんな場所でも前に立てる人だったんですね。それと自分を比べて、僕はああいう存在にはなれないと勝手に思い込んでいたんです。コンプレックス……と言ったら大げさかもしれないけど。だから、拓也が最初に組んでいたバンドが解散してオーラルを始めるタイミングで急に誘われた時にはびっくりしました。なんで俺?って。その疑問と、拓也やあきら(Ba)に追いつけない焦りと申し訳なさは、メジャーデビューするくらいまでずっと引きずっていましたね。だからこそ自分にできることはなんなのかを考えて、コードやスケールの理屈がないならメロディを強くしようと。それが偶然、人に特徴的だと言われるフレーズになっていったんです」


Photo = Mitsuru Nishimura

人と自分を比べて、自分の至らなさに俯く――そんな感覚を、バンドメンバーである以前に幼馴染である山中に対して抱いていた鈴木。そんな中でも必死に自分だけの武器を見つけようともがいた軌跡が、ストイックにメロディを弾き倒す彼のユニークネスに直結したのだ。そして今や、オーラルになくてはならない「もうひとつの歌」として確固たるポジションを築き上げている。「自分は未だに根暗なので」と半ば自嘲気味に笑いながら語る鈴木だが、その言葉とは裏腹に、直近の楽曲ではさらに堂々としたサウンドを聴かせるようになった。オーラルは昨年ベスト・アルバムをリリースし、第二章へのリスタートを切ったタイミングだ。直近の楽曲は以前よりさらに豊かなバリエーションを誇るようになったバンドの進化にあたって、鈴木の成長が大きな要素だったことは言うまでもない。

Photo = Mitsuru Nishimura

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