高良健吾が語る、自由な生き方とこだわり 「ライフスタイルを作るってクリエイティブ」

そんな高良に「ライフスタイルのこだわりは?」と聞くと、彼らしいこんな答えが返ってきた。

「ライフスタイルを作るって『クリエイティブな行為』だと僕は思うんです。要は、誰でも自分のライフスタイルをクリエイティブしている。『ものを作るって、どういうことなのか分からない』と言う人は結構多いですよね。そう言う人は、例えば映画鑑賞にしても読書にしても、『受け身』の行動だと思っている。でも、映画を観たり本を読んだりした前と後では、多かれ少なかれ『違う自分』になっているじゃないですか。洋服を選んだり、料理を作ったりすることも同じで、『どういう自分になりたいか?』をイメージしながら日々の生活を送ることは、それ自体が『ライフスタイルを作る』行為だと思いませんか? コロナによって自粛期間に入り、自分自身と向き合う時間や家の中のことをする時間が増えたことで、よりそんなふうに考えるようになりましたね」

19歳でデビューした高良は今年、33歳を迎える。30代になって初の主演映画『アンダー・ユア・ベッド』は、誰からも「いない存在」とされてきた孤独な主人公・三井が、妄想の果てに暴走していくストーリー。彼の行動は純愛なのか、あるいは狂った自己愛か、それともただの執着なのか。いずれにせよ彼を、「違う種類の人間」と簡単に断罪することは出来ない。


Photo = Mitsuru Nishimura

「どんなにモラルが外れている人間に対してでも、『共感』ではなく『理解』はできると思うんですよ。その行動に共感できなくても、理解できた瞬間怖くなることってあると思うんですよね。自分の中にも、同じ感覚があることに気付くわけですから。もっと怖いのは、人を善悪で裁く行為です。『こんなことをするなんて、人間じゃない』と言う人もいますけど、人間だからこそ過ちを犯すわけで。一度や二度の過ちなんて、人間らしいしやり直すチャンスくらいあげたらいいと思う。いや、『あげる』なんて傲慢だな、チャンスは『必要』だと思いますね」

そう話すと、再び表情を和らげた高良。年齢を重ねてきたことによって、彼の仕事の向き合い方はどう変わってきたのだろうか。

「昔はそれこそ『アンダー・ユア・ベッド』の主人公のような役でも、感情の赴くまま『自分の世界』で演技をし過ぎていたというか。若い頃はそれで良かったし、そういう演技が求められていたんですけど、無意識でやれていたことに対してずっと不安がありました。偶然や奇跡を『待つ』のではなく、自分から『呼び込んで』いかないと、30代40代になった時にキツイなと。自分の感情や体の動かし方をコントロールする術を学ぼうと思って、20代の頃から少しずつシフトしていきましたね」

ただがむしゃらに役へと没頭するのではなく、自分を俯瞰しコントロールすることで演技の精度を上げていく。そんなストイックな職人的姿勢は、九州男児としての矜恃といえるのかもしれない。


高良健吾
1987年11月12日生まれ。熊本県出身。O型。2006年、『ハリヨの夏』で映画初出演。出演映画に『蛇にピアス』『ソラニン』『横道世之介』『悼む人』『多十郎殉愛記』など。またドラマにも多数出演しており、NHK朝ドラ『おひさま』『べっぴんさん 』やNHK大河ドラマ『花燃ゆ』など、2021年にはNHK大河ドラマ『青天を衝け』、映画『おもいで写眞』(1月29日公開)、『あのこは貴族』(2月26日公開)、『くれなずめ』(GW公開)が控える。


Photo = Mitsuru Nishimura

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