NYの救急救命士「私が生活費のためにヌード写真を公開した理由」

パンデミック中にキャリアをスタート

ー勤務中に亡くなった最初の患者さんのことを覚えていますか?

私個人が経験した亡くなった患者さんの状況はぱっと思い出せませんが、ご自宅から搬送するときのことが頭に浮かびますね。家族は救急車に同乗することも、病院内に入ることも認められなかったんです。ご家族の皆さんが、顔を合わせられるのはこれが最後になるのだろうか、と互いに見つめあう様子を思い出します。患者さんに「見舞客には会えません」と伝えたり、患者さんのご家族に「申し訳ないですが、病院までついていくことはできません」と伝える役を引き受けるのは、かなり堪えます。患者さんがその後どうなるか、私にはわからない。病院でどんな治療を受けるのかもわかりません。私が言えることは、私の救急車で、私の担架に横たわり、私がケアをしている間は、最善を尽くして患者さんを落ち着かせ、できる限り手を差し伸べることだけです。

ーそうした経験は、ご自身の精神状態にどんな影響を及ぼしましたか?

実は昔からずっとうつ病に悩まされていて、最近は不安症も抱えています。自分が元気じゃないと患者さんの世話をすることなどできないのは分かっています。だからすごく苦労しました。もともとすごく人に共感しやすい質なので、自分の救急車で人が亡くなるのを見るのは本当につらかった。でも感染者数はひたすら急増するし、大勢が亡くなって、誰も手の施しようがなかった。当時はルームメイトと一緒に住んでいたんですが、ほとんど顔も知りませんでした。さんざん働いた後、誰もいないアパートに帰ってひたすら泣きました。すごく淋しくて。その日自分が目にしたことは誰にも話せない、という気分でした。自分が無力に感じました。人が死んでいくのを見守るしかできないんだ、と。

パンデミック中にキャリアをスタートできたのは、幸運とも言えるし、呪いとも言えます。でも個人的には、そのおかげで強くなれたと思います。どれだけつらかったか、自分でもよく分かります。孤独感や無力感のせいで、今年に入ってから何度も自殺願望に悩まされました。ふと気づくと、こんなに傷ついたり悲しい思いをしてまで、なぜこの世に生きてなくちゃいけないんだろう?と考えたり。ニューヨーク市は世間から忘れ去られてしまったんじゃないか、政府からも忘れ去られ、自分たちだけ取り残されたような気分でした。

Translated by Akiko Kato

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