『マンダロリアン』シーズン2、感動的な終幕の振り返りと考察

その代わりにファヴローは、マーベル・シネティック・ユニバース(MCU)の同僚たちからヒントを得(故ピーター・カッシングと故キャリー・フィッシャーをCGでよみがえらせた2016年の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を思い出してほしい)、デジタル技術でハミルを若返らせることでシリーズ史上もっともシビれる貴重な数分間を実現させた。たしかに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)の若きトニー・スタークほどの完成度ではなかったにせよ(とりわけR2-D2をはじめ、他のキャラクターとルークの一部が一緒に映っているシーンなど)、ルークが過去から物語の世界へと足を踏み入れる瞬間のインパクトは完璧以上の何ものでもなかった。別のスピンオフ作品で主役を任されたアソーカ・タノがグローグーの訓練を断ってから、この任務にふさわしいジェダイはいなくなってしまった。それは、生存しているジェダイ全員の名前をすぐに挙げられるコアな『スター・ウォーズ』ファンにも、映画しか観たことがないという気軽なファンにも同じくらい難しい問題だ。物語のこの時点で、グローグーの声に応じられるジェダイは、ルーク・スカイウォーカー以外はあり得ない。ファヴロー以外の人なら、ハミルが『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)に出演してから40年近くが経っているという現実を理由に、別の選択肢を選んだだろう(『ジェダイの帰還』は『マンダロリアン』の舞台の数年前という設定になっている)。

登場するルークは、英雄としての権威をあますところなく与えられる。私たちは事実上『マンダロリアン』のエピソード全編をすでに堪能していて、マンドー、キャラ・デューン、ボバ・フェット、フェネック・シャンド、ボ=カターン・クライズ、コスカ・リーヴスが帝国軍残党の指揮官モフ・ギデオンの乗るライトクルーザーに侵入し、ギデオンの兵士を制圧するのを見てきた。すべてのアクションシーンは歯切れが良く、これ以上ないくらいエキサイティングだ。一人ひとりが輝く瞬間があり、もちろん我らが主人公マンドーもこの上なく便利なベスカー鋼の槍でダークトルーパーのドロイドとダークセーバーを持つモフ・ギデオンの両者を破る。その後、マンダロリアンとボ=カターンの間に緊張が生じる。マンダロリアン宮殿の玉座を取り戻すには、ダークセーバーの持ち主となったマンドーをボ=カターンが倒さなければならないからだ(訳注:ダークセーバーは、持ち主を倒さないと自分のものにできないという掟がある)。ギデオンを演じるジャンカルロ・エスポジートは、どうにもならない掟のせいで闘わなければならないと気づいた瞬間のマンドーとボ=カターンを目の当たりにする喜びを見事に演じている。

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惑星マンダロアの極めて異なる教義の代表者ふたりが対決しようとするや否や、マンドーが先ほど宇宙の彼方に吹き飛ばしたダークトルーパーたちが戻ってくる。マンドーはなんとか生き延びるが、クルーザーのブリッジを占拠している寄せ集めの兵士の軍団相手に勝てる見込みはほとんどない。その瞬間、Xウイングに乗ったひとりの男が飛び込んでくる。茶色いローブをまとい、緑色のライトセーバーを持つこの男の右手は、黒い手袋で隠されている。これらはすべて、この男がルークであることを示すヒントであり、まさか肩透かしを食わされるのでは? と心配になるほどだ。だが当然ながら、この男は紛れもなくルークだ。ブリッジのモニター越しにちらりと見えるだけだが、ジェダイがダークトルーパーの残党を倒していくシーンは、予算的な懸念はもちろん、マンドーとグローグーと対面するまで正体を隠しておきたいという制作チームの願いの現れでもある。モニター越しでしかルークが見られない状態は、グローグーへのインパクトを増大させる。グローグーは、初めて『スター・ウォーズ』を観る子どものように宇宙をひとつにし、すべてを良くするフォースという全能の力にただただ驚いているのだ。グローグーがモニターに手を伸ばすのは、彼とルークが力によって結びつけられているからだけではない。それは、圧倒的な力を目の当たりにし、それに近づきたいと思っているからだ——たとえそれが父親的存在を残していくことだとしても。

Translated by Shoko Natori

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