Zoomでの制作、ビートルズ再発見
ー新曲のリリースおめでとうございます。どういう経緯だったのですか?
リンゴ:ダイアン・ウォーレンが歌詞を書いてくれてね。“忘れてしまった夜に捧げよう、決して忘れることのない友らと”素晴らしい表現だ。みんなが集うという内容が、今の時代にぴったりだと思った。誰でもみんな、よく覚えていない夜のひとつやふたつはある。そういう夜にはいつも、忘れることのない友達がそばにいる。
そういう連中が参加して手を貸してくれた。ポール・マッカートニーもだ。彼も加わっている。ジョー・ウォルシュ、シェリル・クロウ、ジェニー・ルイス、クリス・ステイプルトン、ベンモント・テンチ。デイヴ・グロールとベン・ハーパーには最初に声をかけた。最後の最後にレニー・クラヴィッツも加わった。フィネアス、ヨラ、ブラック・ピューマズも。コリーヌ・ベイリー・レイは見事に歌い上げている。みんながちょっとずつ一声貸してくれた。
ーパンデミック以前は、毎年必ずツアーをやっていらっしゃいましたね。
リンゴ:ツアーが大好きなんだ、だからだよ。今もできることなら外に出たいが、誰もいないだろうな。誰もが俺と同じようにブツブツ言ってるよ、「外に出たい、ツアーに出たい」ってね。今年1本目のツアーは5月だったんだが、3月になるまでキャンセルしなかった。パンデミックがこんな風になるなんて一体誰が予想できたっていうんだい? 来年まで続きそうだが、様子をみながらだろうね。
今年はツアーを2本予定していたんだが、パンデミックでダメになって残念だった。プレイするのが好きだから、何日か落ち込んだよ。それで結局EPを作った。おかげで助かったよ――レコードを作ったり、少々絵を描いたりね。
ー素晴らしい。あなたは10人が束になっても叶わないほどエネルギッシュですね。
リンゴ:9人だよ。(ジョン・レノンの声真似をしながら)「♩ナンバー・ナイン、ナンバー・ナイン……♩」
Zoomで収録したので、タイトルは『Zoom In』。今はなんでもかんでもZoom経由。この時代にふさわしいと思った。大晦日に、俺たちと一緒にみんなで歌ってくれたらうれしいね。5枚組のEPだ。EPのことなら俺に任せとけ。これまでさんざんやってきたからね。
ー全ては巡り巡ってくるわけですね。
リンゴ:すごい話を聞いたんだが、いまどきの若い子はカセットを聞いているらしい。あくまでも聞いた話だが、音楽雑誌で働いてる君の方がきっと詳しいだろうね。素晴らしいことだ。俺なんか、1年半前にやっとカセットプレイヤーを片付けたばかりなのに! でも、またカセットが復活したよ――レコードプレイヤーの横に置いてある。
ーひと回りするんですね。音楽は時代を超える。
リンゴ:その通り。すごいことだ。俺の場合、自分がいたバンドが毎日のように聴かれているのはラッキーだ。いつの時代も若い子がいまだにビートルズを発掘してるんだからね。正直びっくりだ。どの年代の人も俺たちの曲を聴いてるんだぜ? 今はストリーミングでそうとう聴かれている。すごくないかい? そのうちきっと、頭に小さなチップを埋め込むことになるよ。それで音楽をかけて、そこに直接ダウンロードするんだ。
ー若い子たちがビートルズを再発見しているのを見て、驚きますか?
リンゴ:まぁ、俺は若い子にいつも好かれてきたけどね。だがビートルズのリマスター作品は最高だね、ドラムの音が聞こえるようになった。バンドを始めたころ、最初に埋もれる音といえば真っ先にドラムだった。もっと低く、もっと低く、もっと、もっと。俺はたまにスネアを鳴らしてるみたいな感じだった。それがジャイルス(・マーティン)とリマスタリング技術のおかげでドラムが聞こえるようになった。よく言われるよ、「この演奏はあなた?」「ああ、俺だよ」ってね。最高だね。この点に関してはジャイルスがいい仕事をしてくれた。すごいヤツだよ。