2020年に激変した音楽ビジネス、絶対知っておくべき12の事柄

9. それでも独占したがるメジャーレーベル

2015年、音楽業界が世界全体で新譜の発売を金曜日に統一することを決定した時、インディーレーベル各社は多様性が失われ、シーンがアメリカ産ポップ一色になってしまうことを懸念した。だが蓋を開けてみれば、その真逆のことが起きた。現在ではスウェーデンやフランス、イギリス、ナイジェリア、フィリピン等のアーティスト(その多くはインディーのヒップホップアーティスト)たちが、母国においてストリーミング(およびチャート)で成功を収めている。その傾向にはメジャーレーベル各社も注目しており、ユニバーサルは過去18カ月の間にアフリカと東南アジア、そしてイギリスでDef Jamをローンチするとともに、モロッコやイスラエル等で開いた新オフィスに投資している。一方ソニー・ミュージックは最近、東アフリカと南アフリカにおけるA&R活動に多額の投資を行うとともに、フランスでエピック・レコードをローンチした。これらはそういった動きのごく一部に過ぎない。多国籍企業である各メジャーレーベルは、無数に存在するのローカルシーンの掌握なくして、グローバルな音楽業界を制することはできないことをよく理解している。— T.I.

10. 中国を中心とした業界構造へのシフトチェンジ

このトピックは今後、本誌の音楽ビジネス総括記事に毎年登場することになるだろう(少なくとも中国の巨大エンターテインメント企業Tencentが世界全体の音楽業界を手中に収めている間は)。Tencentを中心とする企業連合は今年、ユニバーサル・ミュージック・グループの株の10パーセントを購入し、つい最近その数字を20パーセントにまで引き上げた。またTencentはワーナー・ミュージック・グループの少数株主となったほか、インドにおけるSpotifyのライバル企業Gaanaの株保有率を34パーセントまで増加させた。そして同社は10月に、AIによってストリーミングサービス上で最もホットな新人アーティストを解析するA&Rツールで知られる、イギリスを拠点とするInstrumentalの少数株主となった(その目的は各レーベル、というかTencentがライバルよりも先にそういったアーティストと契約することだ)。さらに同社はSpotifyの株の9パーセント、Epic Gamesの株の40パーセントも保有している。後者の看板商品であるフォートナイトが最近、トラヴィス・スコットをはじめとする大物アーティストたちによるバーチャルコンサートを開催し始めたことは偶然ではない。 — T.I.

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE