17歳の美少女、ビアンカ・デヴィンズの短い生涯と拡散された死|2020年ベスト

正義を願う遺族

2月にはブランドン・クラークの裁判が始まる。起訴内容は第二級殺人(彼は無罪を主張している)。ローリングストーン誌の取材に対し、公選弁護士のルーク・ネブッシュ氏は裁判に関するコメントを控えたが、ビアンカが他の誰かとキスしているのを見たクラークが、怒りに駆られたという説に基づいて、過度の情緒不安定を盾に弁護してくるだろうとコロマト警部補は予測している。だが警察当局によれば、ビアンカの殺害が事前に計画されていたことを裏付ける証拠は十分にあるという。殺害現場からはナイフやロープ、その他複数の道具が押収された。「これは計画殺人です」とパラディノ捜査官も言う。「彼が唯一成し遂げられなかったのは、自分の命を絶つことだけでした」

キム・デヴィンズと家族らは、クラークの聴聞会を毎回欠かさず傍聴し、一番重い――懲役25年から終身刑――の判決を求めている。彼らが身に着けているのは、ブランコに乗った少女のシルエットが描かれた派手なピンクのTシャツ――ビアンカが好きだった色と、子供の頃好きだった遊びを象ったものだ。キムは法廷でクラークの目を見つめ、どれだけの人の人生を台無しにしたのか思い知らせてやりたいと考えている。「あいつが生き延びるなんて不公平だわ」


ビアンカのアート作品のひとつ。(写真提供:デヴィンズ家)

公判開始までの数カ月間、キムは決して筋の通らない出来事に、意味を見出そうと努力している。彼女は心理学専攻の学生向けの奨学金を立ち上げ、ビアンカの名前をつけた。また2月にはチャリティパーティーを開き、ビアンカのアート作品を展示する予定だ。精神疾患と戦う青少年を救いたい、というビアンカの夢を叶えるのが目的だという。

殺される数年前、ビアンカ・デヴィンズはよく妹のリブや親友のジャンナ・マレーと一緒に、動画を作ってはYouTubeに投稿していた。ジャンナ曰く、当時ビアンカはカメラの前に立つのを嫌がっていて、いつも2人を撮る側に回った。だがひとつだけ、ビアンカの姿を収めた動画がある。11歳頃に撮影されたもので、公園の丘を登ったり下りたりして駆け回っている。氷の張った土手に一目散に向かい、途中つまずいて楽しそうに悲鳴を上げる。その笑顔は何光年も先へ届くようだった。

その動画を見ていると、この少女が成長した時の様子がありありと目に浮かぶ。長期休みに帰省して、人のごった返す家でのんびり寛ぎながら、洗面所で髪を染め、取り巻きの男の子からのメールを無視し、妹にエルヴィス・プレスリーの曲をウクレレで弾き語る。幸せな未来に向かっていく姿を想像するのは容易い。それを阻もうとした人間の心情を想像する方が、ずっと困難だ。


Translated by Akiko Kato

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