YOASOBIが語る、影響を受けた10冊の本

「俳句は祖父母や母がやっていて、小さい頃から身近に感じていた」(ikura)

ーikuraさんが選ぶ『俳句大歳時記 春』と『言の葉連想辞典』は、どちらも日本語の美しさに気付かせてくれる本ですね。

ikura 俳句は祖父母や母がやっていて、小さい頃から身近に感じていたんです。それで去年、大学で俳句の授業を取り『俳句大歳時記』を手にしました。家には春夏秋冬すべて揃っているのですが、季語がどれも綺麗な「春」が一番好きです。普段の生活では絶対に使わないような言葉がたくさん載っているんですよ。自分の知らない言葉がこんなにあることにも驚きましたし、それぞれ言葉にロマンを感じます。古文を学んだ時も「日本語って綺麗だな」と思ったんですけど、歳時記を使って俳句を作るようになってからは、より強く実感しました。

『角川俳句大歳時記「春」』
編:角川学芸出版

『言の葉連想辞典』
編:遊泳舎

ー『言の葉連想辞典』は、ユニークな「辞典」を多数出版している遊泳舎の本です。

ikura 遊泳舎さん、すごく好きなんです。恋愛に関する様々な言い回しを紹介した、『ロマンスの辞典』がとても良かったのでこの本も購入しました。「空」や「恋」など、テーマに沿った素敵な表現がイラストとともに紹介されているのですが、これもやはり普段使わない美しい日本語に、たくさん触れられるところが気に入っていますね。「イラストから想像を膨らませて、自由に言葉を見つけて下さい」とも書かれてあって。イマジネーションをいろいろ広げることもできる本なので、表現力を磨きたいクリエーターさんにお勧めしたいです。

ーAyaseさんが選んだ吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』はベストセラーになりました。

Ayase 僕がそもそも東京に出てきたのは、前にやっていたバンドで一旗上げようと思ったからなんです。メンバー全員で上京して7年くらい活動していたのですが、全然うまくいかなくて。だんだん自信もなくなってくるし、将来に対する不安も大きくなる一方でした。バイトに明け暮れ、音楽をやる時間も削られる「負の悪循環」の中でもがいていたんですよね。3年くらいはもう水道ガス電気、全部止まっているのもザラだという(笑)。そんな地獄のような日々を送っているときに、『君たちはどう生きるか』の漫画版が父から送られてきたんです。

『漫画 君たちはどう生きるか』
著:吉野源三郎 漫画:羽賀翔一

ーこの本は文字通り、主人公のコペルくんが、叔父さんとのやり取りの中で「自分はどう生きるべきか?」を見つけていく話です。

Ayase 父も母も、僕がやっていることを応援してくれてはいたんですけど、もちろん親心として心配もあったのだと思います。それで、何か言葉をかける代わりに本を1冊送ってくれた。「1度きりの人生なんだから、悔いのないように頑張れよ」というメッセージだったのだろうなと。それでもう一踏ん張りしようと思えた一冊でした。

ーそんな大変な状況の中、「もう音楽はやめようかな」と思ったことはなかったのですか?

Ayase 胃潰瘍で入院した時はさすがにつらかったですね。退院してもバンドは止まったまま、9年付き合っていた彼女にもフラれてしまって。さすがにその時は「東京を離れ地元でゆっくりしてから、海外にでも行って心機一転しようかな」みたいなことは考えました。親にも「バンドを辞めてマレーシアに飛び立ちます」なんて宣言しましたね(笑)。それで、パスポートを取得する間だけ実家に戻っていたのですが、その時にYOASOBIの話が舞い込んできたんです。

ーなんですかその絶妙なタイミング(笑)。

Ayase 最後のチャンスじゃないけど、「じゃあその打ち合わせだけ行ってみよう」と思って。それで再び東京に行ったまま今に至ります。

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