TikTokで曲の未来を占うラッパーたち「限られたリソースをムダにしたくない」

TikTokで「BOO!」をヒットさせたChampionxiii(Photo by Gabe Lopez)

時計の秒針音、ハンドクラップ、強烈なボトム、そして「ビッチ、俺はお化けだ!」という風変わりでチャーミングなリフレインが印象的なラップ曲「BOO!」。同曲を世に発表する前から、現在25歳のラッパーChampionxiiiはそれがヒットすることを知っていた。

それには根拠があった。米マサチューセッツ州スプリングフィールドで生まれ育ち、現在はヒューストンを拠点としているChampionxiiiは、作りかけのデモをすべてTikTokで公開し、240万人のフォロワーの反響次第で曲にするかどうかを決めているからだ。「作曲からレコーディング、それにマスタリング等、曲を完成させるのには多くの金や時間がかかる」。彼はそう話す。「俺は限られたリソースをムダにしたくない。賭けに出る必要はないんだよ。あるフリースタイルを曲として仕上げるべきかどうかを、俺はオーディエンスから教えてもらっているんだ」



これはクリエイティブプロセスにおけるTikTokの影響力を示す最新の事例のひとつだ。圧倒的な人気を誇る同アプリは、既にレーベル各社の優先事項とマーケティング戦略を劇的に変化させており、中にはTikTokユーザーが曲を見つけやすいよう、アーティストが楽曲のタイトルを変更したケースさえある。また同プラットフォームは、アーティストが断片的なアイデアを曲として仕上げるべきかどうかを見極めるためのツールとしても機能している。

「まずTikTokで公開して、ある程度の反響があったものだけSoundCloudにアップし、次にApple Music、最後にSpotifyというプロセスを辿ることも多い」。そう話すのは過去にメジャーレーベルの重役を務めたジェフ・バウワーズだ。彼が運営するWaxmgmtは、Llusion、Freddie Dredd、Savage Ga$p等、TikTokで高い人気を誇るアーティストたちを抱えている。「(TikTokは)ワークショップみたいなものだ」

@dreamchaserjayy

“Imma ghost” , my crush can relate #fyp #trending #dreamchaserjayy #viral

♬ BOO! - Championxiii


効果的なワークショップは、何が反響を呼び、何がそうでないかというフィードバックを必要とする。Championxiiiにとっては、TikTokのコメント欄がそのソースとなっている。「俺はあらゆるコメントを参考にしてる」。彼はそう話す。

どのフリースタイルを曲として仕上げるかを決定する上で、彼は独自の基準を設けているという。言うまでもなく、鍵となるのは「ずっとループ再生してる、続きが聴きたい!」といったコメントなど、多くのフォロワーから熱狂的な反応を得られるかどうかだ。TikTokユーザーたちが自身の動画にChampionxiiiのフリースタイルを使っているかどうかも、曲がストリーミングで成功を収めるかどうかを見極める上で有力な判断材料となる。

「そういう反響が得られれば、プロセスの第2ステップに移る。スタジオに入り、曲の完成形のラフバージョンを作るんだ」。彼はそう話す。「俺は独自のやり方を確立してる。特許を申請したいくらいさ」

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE