川谷絵音が振り返る2020年の音楽シーン

注目すべきはデュア・リパ

―ランキングの中で、個人的に好きだったアーティストを挙げるとしたらどうですか?

川谷:「世界で最も再生された楽曲」の中だと、デュア・リパが一番好きです。デュア・リパはめちゃくちゃセンスありますよね。配信ライブもすごくて、視聴回数の世界記録を作ったんですよね? モデルとしても、インスタグラマーとしての存在感もすごいし、歌もいいし曲もいいし、ミュージシャンズ・ミュージシャンでもある。今はテイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュよりもデュア・リパだなって感じで、僕の中では2020年のアイコンでした。最近、ichikaくん、PARKGOLF、宗本(康兵)くんと4人でチームを作って遊びで曲を作ったりしてるんですけど、デュア・リパ聴きながら「こうなってるんだ」って研究して、それも面白かったです。みんなそれぞれに好きな音楽があるんですけど、デュア・リパに関しては4人とも「いいよね」って。



―デュア・リパの曲が面白いと思ったポイントみたいなのってありますか?

川谷:ちゃんと流行りも押さえつつ、自分の特徴もすごくあるんですよね。「こういうのあるよね」じゃなくて「デュア・リパだな」ってなる。単純にメロディが良いし、そのメロディとリズムの噛み合わせも最高なんですよ。デュア・リパはずっと伸びてますよね。Spotifyのランキングでもかなり上位だし、センスもあるしかっこいい。いいとこ取りをしてるんだけど、ちゃんと新しいこともやってるし、プロデューサーの名前を見ると、コライトの仕方も上手いんだろうなって。意外と今までいなかったタイプだと思いますね。

―ビリー・アイリッシュがこれまでのポップアイコンに対するカウンターだったとしたら、デュア・リパは王道を引き継ぎつつ、イギリスから出てきたニュースターだというのも大きいかもしれないですね。

川谷:あと、ハリー・スタイルズのアルバム『Fine Line』(昨年12月リリース)もよかったです。ラジオで何回聴いても、やっぱりすごいなって。あんなに人気のグループ(ワン・ダイレクション)からソロになった人が、ちゃんと音楽的なことをやってかっこいい、しかも、ヒップホップとかではないじゃないですか? 流行りも落とし込みつつ、スタジアムロックっぽいのも入ってたりして。そこが新鮮に響きましたね。デュア・リパも言ってみれば流行りの側で、でもハリーだけはしっかりロックなギターの音が聴こえてくる。このランキングの中では唯一なんじゃないかな。サブスクは音圧の問題もあって、ヒット曲の中にギターがバーンと鳴ってる曲ってなかなかなくて。さらにコロナになって、歪んだギターはこれまで以上になくなってきたじゃないですか? でも、ハリーはギターがちゃんとコードで鳴ってて、ロックでかつヒットしてる。この中では異色ですよね。



―ロックということで言うと、この号にはマシン・ガン・ケリーのインタビューも掲載されます。

川谷:マシン・ガン・ケリーも面白いですよね。でも、ああいう感じってセンスが問われるから、なかなか難しい。一歩間違えれば、ただのごった煮というか「流行ってること詰め込みました」みたいな感じになっちゃうと思うんで、マシン・ガン・ケリーはすごいなって。そういう意味では彼みたいに、ギターをセンス良く入れてくる人が、2021年には台頭してきそうな気はしますけどね。やっぱり時代は回るじゃないですか? 今の感じにはみんな飽きてきてると思うんで、だんだん変わってくるのかなって。



―「世界で最も再生されたアーティスト」のランキングを見ると、トップ20の中にバンドは一組も入ってないです。

川谷:それはちょっと寂しいですね。でも、ハリー・スタイルズがソロでここまで売れたのは嬉しいですよね。あっ、関係ないんですけどそういえば2年前の正月に、一緒にカラオケに行ったんですよ。渋谷のカラ館で。

―えー!

川谷:(野村)訓市さんに呼ばれて行ったらハリーがいて、でも店員さんは全く気付いてなかった。あれ歌ってましたよ、タイタニックの歌。

―セリーヌ・ディオン?

川谷:そうそう。あれを原キーで歌ってて、最後のほう声出なくて(笑)。その後クラブに行ったら、外国人にめっちゃ囲まれて、そのまま連れて行かれました。渋谷の街を歩いてるときは誰も気づかなかったのに、クラブではギャー!ってなって。僕はそこで帰りました(笑)。

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