川谷絵音が振り返る2020年の音楽シーン

BTSについて、川谷に刺さった洋楽は?

―RSのランキングに話を戻すと、BTSが16位に入っています。Spotifyの「世界で最も再生されたアーティスト」でも6位ですが、彼らに対してはどんな印象ですか?

川谷:好きですよ。「Dynamite」は誰が聴いても好きじゃないですか? ハッピーソウルっていうか、どんな気持ちでも聴ける曲。ああいうハッピーソウル的なディスコキラーチューンが、コロナの中でど当たりしたというか。BPM120くらいの4つ打ちはまた流行りましたね。「Dynamite」もそうだし、ビリー・アイリッシュの「everything i wanted」もそっち寄りだったし、ジェイムス・ブレイクのEPも急に4つ打ち寄りになったりとか、時代がそうなってるのかなって。デュア・リパやザ・ウィークエンドもそうですよね。EDMとかじゃない、ハッピーソウルディスコのこの流れは2021年も続くのかなって。日本には遅れてやってくるだろうし。





―サブスクで日本と海外の距離が縮まるみたいな話って、一部では確かにそうなんだけど、トレンドが少し遅れて到達すること自体はそんなに変わってないですよね。

川谷:LDH系のグループもK-POPは意識してますよね。去年テレビでGENERATIONSを観たときに思いました。K-POPの中でもBTSはパフォーマンスもすごいし、こんなグループはしばらく出てこないんじゃないですか? BTSはビルボードでも1位ですもんね。

―「Life Goes On」は韓国語メインの曲で1位ですからね。まさに快挙だなと。

川谷:日本のシティポップも、最近になって松原みきさんの「真夜中のドア/STAY WITH ME」が海外でヒットしてますよね。ここまでバイラルで盛り上がるのって、竹内まりやさんの「PLASTIC LOVE」以来じゃないですか。日本人が海外に進出しようとするとR&Bとかヒップホップっぽくなりがちだけど、それだと壁は越えられないというか。やっぱり日本はシティポップなんじゃないかなって。80年代のシティポップのミックスって、ドラムとベースが馬鹿デカくて、ああいうのがウケてるなら、あの路線でもっとやる人が増えてもいいんじゃないかと思うんですよね。あと、日本人が英語で歌うのも、しっかり言葉を学んだとしても、やっぱりちょっと違うし難しいじゃないですか? 「真夜中のドア/STAY WITH ME」の盛り上がりを見ると、日本人は日本語で歌うべきだなって僕は確信を持っちゃいましたね。



―それこそ、BTSの成功例もあるわけですしね。

川谷:でも、BTSは英語でも全然いいんだよなあ。韓国の人って器用ですよね。

―ダンスも語学もしっかり身につけさせて、そこから売り出すシステムができているってことでしょうね。

川谷:BTSを見ると、これは今の日本では無理だなって思います。どう考えても真似できないなって。

―あとはランキング関係なく、川谷さんが2020年によく聴いていた海外アーティストを教えてもらえますか?

川谷:The Mariasっていうネオソウルっぽいバンドはよかったですね。「bop it up!」っていう曲のTシャツを買おうかなって思ってるくらいに。さっきのオスカー・ジェロームもそうですけど、ギターがかっこいいものばっかり聴いてたかもしれない。自分がバンドをやってるから参考になるものないかなって、それで聴いてたのもあります。



―以前、ザ・ストロークスの新作について川谷さんにインタビューをさせてもらったときに、ポストパンクに注目しているという話もありましたよね。

川谷:ポストパンクはめっちゃ聴いてました。BBCが毎年選ぶやつ(BBC Sound of:注目新人リスト)にも、ポストパンクが年々増えてきてて、USはまだだと思うけど、やっぱりギターが増えてくると思うんですよね。2021年は、Spotifyのランキングにバンドも入っててほしいですけど。

―特に好きだったバンドは?

川谷:Do Nothing、The Cool Greenhouse、Egyptian Blueとか……あとはイギリスのバンドじゃないけど、U.S.ガールズとかも聴いてました。だから自分の傾向としては、ポストパンク系かネオソウルっぽいものに二極化してたかもしれない。ジャパニーズ・ハウスやEasy Lifeとかもよく聴いてたな。








―そういう人たちの影響が、indigo la Endやゲスの極み乙女。に落とし込まれているのは何となくわかる気がします。

川谷:あとはブラック・ミディビッグ・シーフは去年から好きですね。とりあえずギターが入ってるのをよく聴いてた感じです。特にオスカー・ジェロームはやっぱり、ギタリストとしてもリスペクトしかないですね。人類を滅亡させようとする曲は怖いですけど(笑)。

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